日本共産党

2004年6月6日(日)「しんぶん赤旗」

イラク新決議

米英が再修正案提示

多国籍軍 暫定政府に撤退要請の権限


 【ワシントン=浜谷浩司】国連安保理が協議しているイラク決議案について、米英両国は四日、六月末に「主権移譲」されるイラク暫定政府が米国主導の多国籍軍に撤退を求めることができるとした、再修正案を理事国に提示しました。

 再修正案は、当面の多国籍部隊の駐留について、来年末の新しい政権発足までとした上で、イラクの「主権政府」の要請があれば、それ以前でも任務を終結させると表明しています。

 従来の決議案は、多国籍軍に撤退を求めることができるのは、〇五年一月に選挙で樹立される移行政府だとし、今月末に主権移譲される暫定政府には、その権限を認めていませんでした。

 ただ、暫定政府はすでに多国籍軍に駐留を求める方針を明らかにしていることから、再修正に実質的な意味は乏しいといえます。

 多国籍軍の扱いで最大の問題は、イラク側が多国籍軍の軍事行動を制約できるかにかかっています。米国はイラク側に「拒否権は認めない」(パウエル米国務長官)としています。


解説

駐留継続へ仕掛け

 米英両国が国連安保理決議の再修正案を提出し、イラク暫定政府の要請があれば多国籍軍のイラク撤退を認めるとしたことは、イラク占領に固執する両国が、安保理各国の支持を得るための新たな妥協であり、米英のイラク占領政策の破たんを改めて浮き彫りにしています。

 軍事力によるイラク占領は、国民的規模の抵抗をうみ、さらに米兵によるイラク人拷問・虐待事件は、イラク国内だけでなく国際的にも厳しい批判を呼び、米軍撤退を求める声が高まっていました。

 占領政策の失敗を取り戻すため、ブッシュ政権は、六月末のイラク主権移譲を利用し、国連やイラク戦争に反対したフランスやドイツの協力を得て、占領下で得てきた利権維持や米軍駐留の継続を追求しようとします。

 ブッシュ政権はそのために、五月二十四日、イラクに主権を移譲するといいながら、現在の米軍主流の「連合軍」に「多国籍軍」として国連のお墨付きを与える新たな安保理決議案を提出しましたが、フランス、ロシア、中国の安保理常任理事国やドイツなどが反発しました。中国は、外国軍のイラク駐留を来年一月までとする独自の修正案を提出。フランスやロシアなどがこれを支持しました。

 こうした反発をかわすために米英は、来年一月のイラク移行政権誕生後駐留をみなおす「用意がある」とする修正案を提出。しかし、それにも、軍事分野も含む完全な主権移譲を求める声がフランスなどからでていました。この中で、駐留軍の撤退を六月末に発足する暫定政権も求めることができるとしたのが今回の再修正案です。

 この新たな提起の一方で、米国は、実質的にイラク占領を維持できる仕掛けもつくっています。再修正案提出に先立つ六月一日に、主権移譲のうけ皿となるイラク暫定政府が成立。その人選には、米国のイラク占領当局が強引に関与し、首相には親米派のアラウィ氏をつけました。同首相が、決議案の如何にかかわらず、多国籍軍つまり米軍の「駐留」継続を求める意向を表明しているのはその仕掛けの一つといえるでしょう。

 岡崎衆史記者


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