2004年6月6日(日)「しんぶん赤旗」
【ロンドン=西尾正哉】ブレア首相の英労働党は、十日投票の欧州議会選挙でイラク戦争問題をめぐって苦戦を強いられています。ブレア首相自身も最近のテレビインタビューで、「イラク問題が労働党の支持に影を落としている。これは議論の余地はない」と認めました。同党は、昨年五月の地方選挙、同九月の下院補選と連続敗北しており、欧州議会での議席減は必至となっています。
英国ではイラク戦争開戦前から強かった反戦の世論が、大量破壊兵器の情報操作疑惑や最近のイラク人拷問・虐待事件でさらに強まっています。二日公表の英BBC放送の調査では国民の半数がイラク戦争は正当化できないと回答しています。
労働党支持率は昨年末に急速に低下、今年に入っては保守党の優位が続いています。五月下旬の民間会社ユーゴブの世論調査では保守党の支持率28%に対し、労働党は1ポイント少ない27%となりました。
この世論調査で18%の支持だった自由民主党のケネディ党首は、選挙政策発表の記者会見で「イラク戦争に不満を持っている人たちの支持を取りつけたい」と語り、イラク戦争を争点に押しだしました。同党は昨年九月に行われた下院補選では予想を覆し労働党が長年持っていた議席を奪っています。
労働党を悩ましているのは伝統的な支持層だった少数派の人々の離反です。特に二百万人いるとされるイスラム教徒の動向。有力なイスラム教団体「英イスラム教徒同盟」は、会員に労働党に投票しないように呼びかけ、レスペクトや緑の党の候補への支持を訴えています。
こうした中で「台風の目」になっているのが、「英国は英国民に選ばれた議会によってのみ統治されるべきだ」と訴え、英国の欧州連合(EU)からの脱退を掲げる英独立党(UKIP)です。同党は、前回欧州議会選挙では保守党もEU批判の立場を取ったため、7%で三議席獲得したにすぎませんでした。しかし、今回は倍の14%の支持率で自民党にも迫るいきおいです。同党の台頭でもっとも危機感を抱いているのが保守党です。EU批判のお株を奪われた形の同党は一日、ハワード党首が、独立党の主張を「極端」と批判、他方で労働党、自民党を「EUの権限拡大を主張する極端な立場だ」と批判することで活路を開こうとしています。
比例代表制による欧州議会選挙で、現在の政治情勢もからんで、伝統的な二大政党制の矛盾が表面化しそうです。