2004年6月12日(土)「しんぶん赤旗」
自民、公明与党が五日に強行成立させた年金改悪法は、審議の過程で政府のごまかしが次々と明らかになり、世論調査でも同法への不支持が六割台と、支持を大きく上回っています。「百年安心」と偽って、年金破壊をリードしてきた公明党の責任は重大です。
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公明党は年金改悪法成立にあたり、「安定した年金制度の道筋がついた」(神崎武法代表)「年金制度守った公明党 国民不安の解消を最優先」(「冬柴幹事長に聞く」いずれも公明新聞六日付)と開き直っています。実際は、年金制度を「守った」どころか、年金制度破壊の第一歩に踏み込んだのです。
年金制度をめぐる最大の問題は、日々の生活をまかなえない低額年金、無年金の人が膨大にいることです。ところが年金改悪法はこうした問題を解決しないばかりか、保険料は連続値上げ、給付水準は低額年金も含めて一律に引き下げるという内容。「制度を守った」「不安の解消」どころか、年金の空洞化はいっそうひどくなり、国民の不安は増すばかりです。
公明党は、こういう改悪を「年金100年安心」と偽り、保険料には「上限」、給付には「下限」があるという看板をかかげて、すすめてきました。
政府案がまとまると、「給付 2023年以降も50%以上を確保 これ以上下げません」「保険料 2017年度以降は固定 これ以上、上がりません」(公明新聞二月八日付)とハートマークのイラスト付きで宣伝してきました。
ところが、国会審議も終盤の参院段階になってから、これがごまかしであることが暴露されました。
―五割給付はモデル世帯でも受け取る最初の年だけで、あとはどんどん給付水準が減る
―保険料も国民年金で一万六千九百円で固定するとしていたのに、実際には賃金上昇に応じて二〇一七年度二万八百六十円、三七年度で三万一千六百十円と上がる
ごまかしがばれて、「『100年安心』誰も信じない」(「毎日」四日付社説)というほどになりました。
しかし、公明党がこのウソを認めたのは、「年金改革案の疑問にお答えします」(公明新聞五月二十日付)という特集が最初でした。マスコミからも「こんな重要ポイントが初めて公表されたのは、審議の最終段階だったのだ。政府・与党はその不誠実を責められて当然だろう」(「東京」四日付)と批判されたほどです。
しかも改悪法のボロが明らかになると、公明党は一転して国民を脅しにかかりました。「今国会見送り」を求める声が世論調査で六割から七割に達すると、「廃案にすると一年間で厚生年金で約四兆四千億円、国民年金で約三千億円の穴が開く」(冬柴鉄三幹事長)と言い出したのです。
法律に明記された〇四年からの基礎年金の国庫負担二分の一への引き上げ(二兆七千億円)を先送りして、年金財政に大穴をあけたのは今度の改悪法です。そのことに口をつぐんだまま、廃案になれば大赤字というのは卑劣な脅迫です。
だいたい、改悪法でも約三兆八千億円の赤字が出ます。廃案にした場合の四兆七千億円との差額九千億円は国庫負担を引き上げれば解消します。
公明党がやったのはそれだけではありません。
公明党は総選挙で、基礎年金の国庫負担引き上げの財源として「所得税の定率減税廃止」「年金課税」という庶民増税を掲げ、定率減税廃止で二兆五千億円もの増税を国民におしつけたのです。
同党の北側一雄政調会長は与党協議で「定率減税の廃止のほかに、年金財源の候補があるなら示してほしい」(「読売」〇三年十二月十八日付)と自民党に迫り、与党税制「改正」大綱に明記させました。
公明党はマニフェストの達成を宣伝していますが、実際に達成したのは庶民増税でした。
しかも、公明党は、自民党とともに、年金や社会保障の財源として、三年後の消費税増税を打ち出し(与党「税制大綱」)、年金改悪をめぐる自公民三党合意でも「社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直し」をおこなうとして、大増税計画を改めて確認したのです。
そのうえ、年金改悪法をごり押しするために、公明党はマスメディアでも「最もずるがしこい」と評されるほどの党略的対応に終始しました。
衆院段階で問題になった国会議員の年金未納問題では、年金改悪法案が衆院を通過した翌日の五月十二日にようやく党の調査結果を公表。法案の衆院通過を最優先させて、神崎代表、冬柴幹事長、北側政調会長と三役そろいぶみで未納だった事実を隠し続けたのです。
この党略まるだしの対応に、「毎日」五月十三日付社説は「こんな国民をバカにしたやり方はない」と厳しく批判。「これでも『100年安心』などと訴える資格があるというつもりなのだろうか」とのべました。
「東京」同十四日付コラムは「『未納はない』と言い切っていた神崎代表はウソをついたことになる。…公党の責任者として、それこそ『そうはイカンザキ』だ」と糾弾しました。