日本共産党

2004年6月12日(土)「しんぶん赤旗」

サミットで示されたもの


中東

米支配構想に批判も

安保理新決議は歓迎

 主要国首脳会議(サミット)の結果は、中東支配を狙う米国にとってどうだったのか―。

 サミットで米国はイラク侵略戦争と占領への国際的承認とりつけを狙い、戦争の「理由」の一つに挙げたイラク「民主化」を中東地域に広げることを「大中東構想」として打ち上げました。

 イラク問題でサミットは安保理決議一五四六を歓迎し、親米のイラク暫定政府への支持を表明。米国の路線を容認しました。しかし、当初の「大中東構想」はサミット開催前にアラブ諸国から反発を招き、サミットの場でも批判に遭いました。

 アラブ諸国は、米国流の「民主化」を相談もなしに持ち出し、これを外部から押し付け、しかも中東問題の緊急の課題となっているパレスチナ問題にふれていない―と反発。同構想の名称は「拡大中東・北アフリカ地域とのパートナーシップ」に変更され、改革が「外部からの押し付けであってはならない」「中東和平の永続的解決が地域の発展の重要な要素」と明記されました。

 一方で、議長総括は「世界の主要先進民主主義の首脳として自由と改革を支援する」とのべ、米国の狙いの一端を表現しています。

 サミットは、別に採択した宣言「ガザ撤退と中東和平への道」で、シャロン首相のガザ撤退案への支持を表明しました。

 シャロン案はパレスチナ領土であるヨルダン川西岸への居座りを狙い、撤退もイスラエル政府の思い通りに変更できるものです。サミットは中東和平の妨害者であるイスラエルと、その行動を支持してきた米国の姿勢には沈黙しています。

伴安弘記者


核拡散

米に非核国が反発

核保有国の責任問わず

 ブッシュ米大統領は今年二月十一日の演説で、核兵器拡散だけでなく、核エネルギーの平和利用についても非核兵器保有国への拡散を同時に阻止する新提案をしました。これは、「米英など五カ国の核保有を容認する代わりに、すべての国の核技術の平和利用を認める」との核不拡散条約の合意に反するとして、非核国の反発を招きました。

 今回の主要国首脳会議が採択した「大量破壊兵器不拡散に関する行動計画」は、「兵器拡散の危険を伴わずに、核技術の平和利用の利益を世界が安全に享受できるようにする」ことを目的として掲げており、米国の言いなりにはなっていません。

 議長総括と行動計画は、北朝鮮とイランへの核拡散の問題を取り上げています。しかし、イスラエル、インド、パキスタンの核保有は放任しています。ましてや、米国をはじめとするサミット参加国の核保有は、完全に視野の外におかれています。これではサミットが掲げる核不拡散が実現する保証はありません。

 オルブライト前米国務長官とクック前英外相は英紙ガーディアン九日付に共同論文を寄稿。今のような不平等状態では非核国による核不拡散体制への「反乱」が起きるとし、それを避けるため、核兵器を保有するサミット参加国は「自国の核兵器削減にもっと努力すべき」だと主張しています。特にブッシュ大統領に対し、「地中貫通兵器のような新型核兵器の開発を中止せよ」と呼びかけています。

坂口明記者


北朝鮮

拉致、核、盛り込む

外交手段で包括解決を

 北朝鮮問題について主要国首脳会議(サミット)の議長総括は、核問題や拉致問題で「外交的な手段により包括的な解決を達成するためのすべての関係者の努力を支持する」と述べました。核問題と拉致問題がサミット文書に盛り込まれたのは昨年に続き二度目で、表現もほぼ同じです。

 拉致問題は、もともと日本と北朝鮮とのあいだの問題ですが、北朝鮮が国際的に行ってきたさまざまな無法行為の一つであり、国際問題という性格をもっています。

 北東アジアの安全保障のために北朝鮮が近隣諸国などと平和関係を確立し、国際社会に復帰することが求められますが、拉致問題解決はそのためにも避けて通れない課題です。

 一方、議長総括は、大量破壊兵器拡散の問題に関連し、北朝鮮をイラン、リビアとともに名指ししたサミット行動計画に言及。ブッシュ米政権がこれまで北朝鮮を「悪の枢軸」「ならず者国家」としてきた政策も反映しています。

松本眞志記者


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