2004年6月13日(日)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】イラクの宗教界や政治組織からイラクに関する国連安保理の新決議に対する批判の声が高まっています。
日本人人質事件の解決に尽力した「イスラム聖職者協会」のファイディ報道官は十一日、「イラク人は米軍の駐留を完全に拒絶している。米国大使館も米軍基地も受け入れない」「これまで数々のうそを繰り返してきた占領軍を信頼することはできない。十五万の外国軍が駐留するもとで、自由と主権を獲得できるとは思わない」と強調しました。
同報道官はこれまでにも、イラク暫定政府に関し、「(米占領当局任命の)イラク統治評議会と違いはなく合法的なものとはいえない」と述べ、イラク人の抵抗が激化するのは必然だと指摘してきました。
旧フセイン政権の崩壊後に相次ぎ結成された新政治勢力からも同様の声があがっています。
「イラク国民再興運動」は、声明で「暫定政府が米軍主導の多国籍軍駐留を要請することを拒絶する」と言明。また「イラク民主潮流」は「暫定政府は統治評議会から引き継がれ、米軍の戦車に守られた非合法の政府である。新決議によれば、多国籍軍の駐留の責任は(撤退を要求できる)暫定政府が負うことになる。とすれば、外国軍駐留への抵抗の矛先は暫定政府にも向かうことになる」と警告しました。
その一方で、米軍の占領に反対してきたシーア派指導者のサドル師は、十一日の金曜礼拝で「暫定政府を支持する」と述べ、アラブ首長国連邦の衛星テレビ、アルアラビアのインタビューに「暫定政権と対話の用意がある」と語ったと伝えられます。
アラブ諸国のマスコミでも新決議に懐疑的な見方が広がっています。
汎アラブ紙アルハヤト十日付は「新決議は、イラクの完全な主権を主張しているが、この決議に賛成した国でさえ、その信ぴょう性を信じることはできないだろう。決議採択後もイラクの現実は変わらず、今後も変わることはないだろう」と指摘しています。
アラブ首長国連邦の英字紙ガルフ・ニューズ十日付は、「新たな米国かいらい体制づくり」の見出しで「米軍が近いうちにイラクを離れることはありそうにない。米政府高官はこれまでにも五年、十年の駐留を表明してきた。形式的に主権が移譲されても、実際はまったく違ったもの」と述べています。