2004年6月17日(木)「しんぶん赤旗」
「憲法九条をなきものにする動きは大きな過ちです」。埼玉県川口市の荻野仁司さん(44)は「イラクの人たちに和解を求める会」で活動し、がんで苦しむイラクの子どもたちの支援金を集めるため奔走しています。バグダッドを二度訪れたなかでイラクの人々とふれあい、憲法九条の大切さを改めて知りました。広がる思いは―。
聞き手・本吉真希記者
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イラクで日本人が慕われている理由には、目ざましい戦後復興ということがありますが、それ以上に、もう侵略はしない、平和を守るという憲法を決めてから六十年近くも戦争をせずにきたことに評価が大きいと感じました。
日本人が犠牲になった事件が起きたのは、自衛隊がイラクに行ったことに起因します。イラクで出会った人々は「日本政府は自衛隊派兵がイラクのためというが、軍隊は軍隊でしかない。アメリカ占領軍と変わらない。どの国の軍であれ一日も早く撤退してほしい」といっていました。
それでも日本人を信じてくれているイラク人はいます。その根底にあるのが九条であり、日本が被爆国ということです。
私たちに何ができるのかを考えると、とても大切なことは選挙で一票を投じることです。政治不信といわれるなか、選挙権を放棄する人がいます。しかし、選挙の結果は私たちの生活にすぐにはね返ってくる問題であり、ある意味、政治家に命をあずけることにもなるので政治を変えることを簡単にあきらめてはならない。
政治の上で、国の安全を五年十年の短い期間で考えてほしくない。五十年後百年後、日本が世界のなかでどのようにしていくのかというビジョンをもって行動すれば、安易に改憲なんて発想は出てこないはずです。アジアの均衡を保つには九条は絶対に必要なのです。九条を世界に広めるということは、武力ではなく、話し合いによって世界平和をきずいていくことになるのです。
私は憲法を守ることは基本中の基本だと考えます。自衛隊派兵に反対することも当然のことです。今回の選挙は私のなかでこの二つが大きな基準となっています。憲法改悪反対や自衛隊の撤退を訴える日本共産党の今後にすごく期待しますし、注目しています。
九条は酸素のようなもの。なくなったときにその重要性がわかるのです。でもなくなったときでは遅いのです。地球環境を守る意味でも、日本だけでなく、どこの国にとっても必要なものです。海外で九条を取り入れていこうという動きがあるなかで、九条をなきものにするのは大きな過ちです。九条を世界外交の基準として考えていっていただきたい。自衛隊派兵や有事法制に賛成し、九条を変える政党の責任は世に問われなければなりません。