2004年6月18日(金)「しんぶん赤旗」
自衛隊のイラクでの多国籍軍参加問題が、参院選の重大争点として浮上してきました。小泉純一郎首相が国民にも国会にも説明せず、ブッシュ米大統領に参加を表明したからです。この問題についての各党の態度を見てみると――。
|
国会にも国民にもまともな説明もしないで、これまで積み重ねてきた政府見解も、首相自身の言明も踏みにじる―。小泉政権と自民・公明両党が自衛隊の多国籍軍参加問題で示した態度です。
これまで政府は、多国籍軍について「目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない」(一九八〇年十月の答弁書)との立場を堅持。多国籍軍への「参加」は「司令官の指揮下に入り、その一員として行動すること」(九〇年十月の統一見解)になるからできないとしてきました。
小泉首相も、日米首脳会談直前の国会審議で、日本共産党の小泉親司議員の追及にたいし、「武力行使を目的とする多国籍軍に、日本は、自衛隊であれどのような組織であれ、参加することはしない」(五月二十七日、参院イラク有事特別委員会)といい切っていました。
ところが、いざ首脳会談にのぞむと、ブッシュ米大統領に、「自衛隊派遣を継続する」とのべ、事実上、多国籍軍参加を表明。日本の安全保障政策の大転換となる重大問題を、国会にはからず、国民への説明抜きで、勝手に米国に約束してしまったのでした。
自民、公明の両党は、対米約束を最優先に「結論ありき」(「日経」十五日付)で党内手続きをすすめました。
当初は党内から異論があがった自民党も、総務会で全会一致であっさりと了承。公明党は、十六日の中央幹事会で、多国籍軍の指揮下に入らないなどの四点が政府の多国籍軍参加方針(「基本的考え方」)に盛り込まれたとして了承しました。
しかし、「多国籍軍の中で活動」することを明記した「基本的考え方」が、従来の政府見解や首相の言明に反することは明白です。
マスコミも「詭弁で“武装”した『多国籍軍参加』」(「東京」十七日付)と批判しています。
|
民主党は、昨年十一月の総選挙では、「イラク派兵反対」を主張しましたが、自衛隊が派兵された後は、「国会承認されて派遣された以上、自衛隊員全員が無事、帰国することを願っている」(三月二十日)↓「自衛隊の即時撤退を求めない」(四月二十日)と、現状追認を繰り返してきました。
多国籍軍への参加問題でも、もともと国連決議があれば参加可能としてきたのが民主党です。四月末には国連のアナン事務総長と会談し、「国連決議にもとづく多国籍軍なら自衛隊の派遣を検討」(四月三十日、菅直人代表=当時)と表明しました。
「自衛隊に正当性を与えられる国連決議ができるように努力すべきだ」(四月二十日、衆院有事法制特別委員会で長島昭久議員)と、政府に“外交努力”を促す場面すらありました。
小泉首相が多国籍軍「参加」を表明した九日(現地時間八日)、世論の反発が強いことを受けて、今度は「新法をつくって参加」(九日)↓「いったん撤退させて、新法をつくって派遣」(十四日)↓「即時撤退」(十五日)と態度をころころ変えました。
これには「(多国籍軍参加問題での)二転三転は国民には分かりにくい。選挙目当てのご都合主義とも取られかねない」(「毎日」十七日付)との批判が上がっています。
民主党がこのような態度しかとれないのは、憲法九条改悪反対、アメリカいいなり政治反対という根本がなく、改憲や日米軍事同盟賛成という点で自民党と共通しているからです。
実際、「自衛隊が国連決議を受けてイラクで活動することは、基本的に賛成」(十四日、参院イラク有事特別委員会で平野達男議員)という“本音”も出ています。
|
日本共産党は、自衛隊のイラク派兵に一貫して反対。多国籍軍参加についても、「イラク情勢の前向きの打開にとっても、日本国憲法にてらしても、有害で危険」(九日、志位和夫委員長の談話)と反対の立場を表明しています。
今、イラクに求められているのは、戦火と混乱をつくりだした元凶であるアメリカが、その軍事行動を強く自制しつつ、すみやかに撤退に向かう措置をとることであり、名実ともに国連が主導的役割を果たすことです。そのときに、自衛隊が「反連合軍・反イラク勢力との戦争を遂行すること」(連合軍機関紙)を任務とする多国籍軍に参加したら、イラク国民に銃口を向けることにもなりかねません。
しかも、“武力行使を伴う多国籍軍への参加は憲法上許されない”としてきた政府見解にてらしても、憲法違反以外の何ものでもありません。
米英軍の軍事占領から国連中心に枠組みを移し、自衛隊は撤退を―。日本共産党は、このことをかねてから強く求め、国会でも論陣を張ってきました。