日本共産党

2004年6月18日(金)「しんぶん赤旗」

「武力行使と一体化せず」国際的に通用しない主張


 小泉政権はイラク多国籍軍への自衛隊参加について、▽「非戦闘地域」で活動する▽他国の武力行使と一体化しない―などを条件に正当化しようとしています。しかし、これは国際的に通用する議論ではありません。

武力行使が中心任務

 イラク多国籍軍は、イラクでの武力行使を中心任務とする連合軍です。これは、多国籍軍の権限を定めた国連安保理決議一五四六(八日採択)をみれば明白です。

 決議は、「イラク情勢は国際の平和と安全への脅威である」と認定し、「国連憲章第七章に基づいて行動」すると規定しています。

 憲章第七章は、憲章第六章で定める平和的手段によって解決できない国際紛争について、武力行使などの強制措置で対処すると決めています。決議の規定は、イラク多国籍軍の行動が武力行使を大前提としたものであることを示しています。

 同決議が定めるイラク多国籍軍の中心任務は、「テロリストの防止や抑止」を含め「イラクの安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置をとる」ことです。つまり、武力行使による「治安維持」です。イラク国民を「テロリスト」視して武力攻撃する可能性も含まれています。

 決議は、加盟国による多国籍軍の貢献として「人道・再建支援」にも言及しています。これはあくまでも「治安維持」のための軍事行動に付随するものにすぎません。

 決議の付属文書であるパウエル米国務長官の安保理議長あて書簡(五日付)は、この点を、より明確に述べています。

 書簡は「旧(フセイン)政権構成者、外国人戦闘員、違法民兵を含む暴徒」をイラクへの挑戦者と描いています。その上で多国籍軍の任務として▽暴力をつうじてイラクの将来に影響を及ぼそうとする勢力による脅威への対処▽これらの勢力との戦闘▽イラク治安部隊の訓練―などを列挙。人道援助については、「人道援助供与の準備もする」と補足的に述べているだけです。

 同書簡と対応するアラウィ・イラク暫定政府首相の安保理あて書簡は、イラクの「政治的移行にとって安全と安定は最も重要だ」とし、多国籍軍の任務として人道支援は挙げていません。

各国「統一指揮」下に

 安保理決議は、多国籍軍が「統一された指揮下におかれる」ことを確認しています。多国籍軍という連合軍である限り、それに参加すれば「統一された指揮」下に入るのは自明のことです。

 米国防総省の多国籍軍活動の指針である「多国籍作戦のための統合ドクトリン」(二〇〇〇年四月五日付)は、多国籍軍に参加する各国部隊が、各国政府の指揮を受けつつ、多国籍軍司令官の指揮下におかれることを当然の前提としています。

 その上で同文書は、「明確に定義され、すべての参加国に理解された使命、任務、責任、権限に関し、(多国籍軍)参加諸国は最大限可能な範囲で、作戦指揮の統一の達成に努力すべきだ」と強調しています。

 マクレラン米大統領報道官も十五日の記者会見で、多国籍軍に参加する各国部隊は各国の指揮下に入りつつ、「多国籍軍全般は米国の指揮によって統括される」と明言しました。

 「他国の武力行使と一体化しない」で多国籍軍に参加するとの日本政府の主張は、国際的には通用しません。他方、主権回復を目指す今日のイラクで、多国籍軍に参加せずに自衛隊が駐留を継続する合意をイラクから得ることは、政府も「事実上不可能」(十六日政府が国会に提示した「基本的考え方」)と認めています。

 安保理が認めた多国籍軍の「指揮下」に入らず、イラクとの協定もない駐留継続は、主権侵害の侵略であり、国際法違反です。自衛隊はイラクから撤退するほかありません。

 坂口明記者


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