2004年6月22日(火)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が出席した二十一日の「五党党首討論」(日本記者クラブ主催)では、くらしと平和・国の進路にかかわる参院選の重大争点―年金改革と消費税、イラクと憲法問題をめぐって日本共産党と自民・公明両党、民主党との違いが鮮明になりました。
志位氏は、「年金改革をいうなら、緊急に改革が求められている問題は二つある」として、(1)あまりにも低すぎる給付水準(2)高すぎる保険料と年金への信頼の崩れでできた制度の空洞化―の二つの問題を指摘しました。
そして、日本共産党がこれを打開するために、国民すべてに月五万円の年金を保障する「最低保障年金制度」をつくり、そのうえに保険料に応じた給付を保障する提案をしていることを紹介。年金改悪法を強行した小泉純一郎首相の責任を追及しました。
志位 年金制度は、国と国民との一種の契約だから、信頼されない制度は成り立たない。国民の七割、八割が納得できないとしている(年金改悪法による)制度が今後たちゆくと考えているのか。
首相 どの政党が政権を担当しても、現状維持していけば年金財政の破たんは明らか。給付も保険料もいま程度に維持していくとなると、大幅増税しかない。
志位 年間四十兆円にものぼる公共事業の浪費を一掃する、五兆円の軍事費にもメスをいれる。高齢化を支える新たな負担については、大企業や大資産家にヨーロッパなみの負担を求める、ここに踏み込まないから、いまのような議論になる。
民主党の岡田克也代表は、年金改悪法の「白紙撤回」要求について、今後の与野党協議の「条件とはしない」とのべました。国民年金を含めた一元化と納税者背番号制度を与党に繰り返し要求。国民負担がどうなるかという議論には踏み込みませんでした。
消費税にたよらない年金改革を提案した志位氏にたいし、民主党の岡田氏は「消費税をその(一元化の)財源として考えるのかどうか、きちんと方向性をだしてほしい」とのべ、消費税増税を与党に迫りました。首相は「私の任期中は消費税は上げない」と繰り返しながら「(増税の)議論は大歓迎」とのべました。
志位氏は、こうした議論を受けて、与党が「二〇〇七年度を目途に消費税を含む抜本的税制改革を実現する」と合意していること、民主党も3%の年金目的消費税を〇七年度に実施しようとしていることを指摘。「(自民・公明と民主の)『三党合意』にはいろいろ書いてあるが、実は二〇〇七年度に消費税の増税ということに合流していく内容が真相ではないか」と批判しました。
そして、「消費税は、一番弱いものいじめの税金だ。社会保障というのは弱い立場の方を支える手段だから、これ(消費税増税)は絶対にとってはならない選択肢だ」とのべました。
自衛隊のイラク派兵問題では、「連合軍の一員にはならない」といういままでの言い分を一転させ、「多国籍軍の一員になる」と明言した政府。志位氏は、多国籍軍の「一員」となることは、米軍によるファルージャでの住民虐殺などの残虐行為の共犯者になることだと追及しました。首相の言い分も次のように批判しました。
志位 小泉首相の方から、「今度の多国籍軍は戦争のためじゃない」とさかんに言われましたが、国連決議でも「イラクの安定のためにあらゆる手段を与える」と書いてある。「あらゆる手段」というのは、軍事行動、武力行動、全部とれる。ですから、武力行使をともなう多国籍軍であることは間違いない。
志位氏は、「武力行使をともなう多国籍軍に参加することは憲法上許されない」としてきた政府見解との関係も説明していないと批判。「なし崩し的に憲法を壊して、派兵をすすめるのは絶対反対だ」とのべました。
民主党の岡田氏も多国籍軍参加に反対したものの、与党側から「四月に前代表が国連のアナン事務総長に『新たな国連決議があれば、日本として多国籍軍に応じる用意がある』と発言した」と追及され、「イラク国民の手による政府の求めがあればということだ」と弁明しました。
憲法問題で、戦力保持や集団的自衛権行使の明確化など九条改憲を明確に打ち出している自民党。神崎氏も「九条堅持」といいつつ、「自衛隊を明記するとか、国際貢献をもっとできるようにとの議論はある」とのべ、小泉首相から「(九条改憲でも)協力できると思う」と歓迎されました。
岡田氏は「国連の集団安全保障には一定の協力をすべき」として九条改憲の姿勢を示しました。
志位氏は、九条改憲の目的について、「海外での戦争はできないとしてきた“歯止め”を全部取り払い、海外で戦争をする国に日本をつくりかえるところにある」と指摘。「九条は世界でみても、イタリア下院で、日本の九条のような戦争放棄の条項をEU(欧州連合)の憲法に盛り込もうという決議があがるくらい、世界でも注目される先駆的条項だ。これを守り抜くために、本当に国民的な共同を強めるため力をつくしたい」とのべました。