日本共産党

2004年6月24日(木)「しんぶん赤旗」

イラクで拉致の韓国人殺害

国会に派兵中断決議案

“悪循環なくす勇気を”


 イラクで韓国の貿易会社社員、金鮮一氏(33)を拉致していた国際テロ組織アルカイダ系の武装グループ「一神教と聖戦団」は二十二日、金氏を殺害しました。武装グループがカタールの衛星テレビ、アルジャジーラに残虐な殺害を明かしたビデオを送付。韓国政府も二十三日、金氏の遺体をバグダッド郊外で確認したと発表しました。

 盧武鉉・韓国大統領は二十三日、国民向けの談話を発表し、「われわれはこのようなテロ行為を強く糾弾し、国際社会とともに断固として対処していく」と表明。同時に、韓国軍のイラク派兵は「イラクの復旧と再建を援助するため」だと述べ、八月実施予定の派兵計画に変更がないことを強調しました。

 一方、韓国の与野党の国会議員五十人は同日、三千人規模のイラク追加派兵を中断し、計画を再検討するよう政府に求める決議案を国会(定数二百九十九)に提出しました。提案者は与党・開かれたウリ党二十七人、野党ハンナラ党六人、民主労働党十人、新千年民主党七人です。

 議員らは国会内で記者会見。提案者代表の権永吉・民主労働党議員は「テロに屈服できないという理由と名分で、何の合理的な根拠もない派兵をやみくもに推し進めるのか。それとも血の悪循環をもたらす災いの火種をなくすために、派兵中断の勇気を発揮するのか」と語りました。

国民の目厳しさ増す

 イラクで武装組織に拉致されていた金鮮一氏(33)の殺害で、韓国は衝撃と怒りに包まれました。現地メディアは二十三日未明、韓国南部・釜山市の金氏の自宅で泣き叫ぶ家族の姿を映し出しました。イラク派兵計画の撤回を求めていた両親は、「政府が息子を殺した」「外交通商省のビルに遺体を埋葬するぞ」とまくし立てました。

 アラビア語に堪能な金氏は、イラク現地の市民とも仲良く過ごしていたようだったといいます。七月には、父親の七十歳の誕生日を祝うために帰国する予定でした。

 殺害に対する国民の怒りは強く、「テロリストの脅しに屈してはならない」という派兵賛成論も出ています。市民団体の共同組織「派兵反対国民行動」は二十三日、ソウル中心部で集会を開催。金氏の死に哀悼を表し、派兵の即時中止を訴えました。

 米韓同盟の維持、強化を理由に、三千人に達する追加派兵に踏み切った盧武鉉政権は、大きな打撃を受けました。

 派兵予定地のイラク・アルビル州政府から派兵受け入れの書簡、国連安保理の新決議採択まで派兵時期の発表を延ばしてきたのは、派兵に批判的な世論を意識する政府が「名分」を必要としたからです。

 しかし、金氏の殺害で国民の目は厳しさを増しています。「派兵がどういう国益をもたらすというのか。国民を死なせてまで派兵する必要があるのか」―。現地メディアが伝える市民の声です。

 韓国メディアは、十九日の米軍のファルージャ爆撃が金氏殺害の一因になったと指摘します。同地で金氏を監禁していた武装勢力は、十八日にいったん解放を示唆したにもかかわらず、二十二日に殺害しました。「武装勢力にしてみれば、報復のためにも金氏を生かしておけなくなった」との指摘です。

 面川誠記者


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp