2004年6月29日(火)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】米国主導のイラク占領機関である連合国暫定当局(CPA)とイラク暫定政府は、当初予定していた三十日の「主権移譲」を急きょ前倒しして二十八日午前、首都バグダッドで実施しました。
主権移譲は、イラク国民の目には触れない密室のなかでおこなわれました。出席者は六人で、“儀式”はわずか五分間。CPAのブレマー文民行政官から暫定政府にたいし「主権移譲」の証書が手渡され、暫定政府のヤワル大統領は「今日は歴史的な日」とのべました。
任務を終えたブレマー氏は二十八日にイラクを離れました。
「主権移譲」が前倒しされた背景には、悪化の一途をたどる治安状況に対処するため、一刻も早い占領体制の「終了」が必要となったためとみられます。暫定政府のゼバリ外相は二十八日、訪問先のトルコのイスタンブールで記者団にたいし、「主権移譲の前倒しにより、われわれはテロリストや犯罪者に挑むことになる」とのべました。
今回の「主権移譲」により、CPAは解散し、イラクの主権は暫定政府の手に移ることになります。一方で、米国は職員二千人規模という世界最大の大使館をCPAが本部としている旧大統領宮殿にそのまま残すとともに、暫定政府の各省庁に外国人顧問団を常駐させる方針です。また占領軍は米軍指揮下の「多国籍軍」に名前を変えて駐留を続け、同軍はイラクの安全を維持するのに必要な「あらゆる措置をとる権限」をもちます。
イラク国内では、米国の強い影響力のもとで選出された暫定政府にたいする懐疑の声も広範に存在しており、イラク情勢の今後は依然として予断を許しません。