2004年7月3日(土)「しんぶん赤旗」
【ロンドン=西尾正哉】英国で労働党、保守党が惨敗した六月十日の地方議会・欧州議会選挙の結果が、長い歴史を持つ二大政党制を揺さぶっています。七月十五日に行われる下院補欠選挙に両党とも戦々恐々としています。総選挙(下院議員選挙)を現行の小選挙区制から、民意を反映しやすい比例代表制に改革するよう求める声もあがっています。
労働党は一九一〇年以来、保守党は一八二三年以来、全国的な選挙で最悪の結果でした。労働党は政権党でありながら22・6%の得票率にとどまり、第三党に転落。敗因は、国民の声を無視してイラク戦争を強行したブレア首相への反発です。
保守党は、地方選挙で労働党に大差をつけたものの得票率は四年前の同じ選挙と変わらず。欧州議会選挙では、欧州連合からの脱退を掲げる英独立党に票が流れ、得票率を前回の35・8%から26・7%へと下げました。次の総選挙での政権奪還には依然、疑問符がついたままです。
選挙で最大の焦点となったイラク戦争の問題で、保守党から目立った主張は聞かれませんでした。同党は開戦前、イラク戦争支持をめぐる国会決議に大半の議員が賛成し、戦争推進ではブレア政権となんら変わりがありませんでした。
両党の大敗は、二大政党のいずれもが国民に見放されつつあることを示しました。
主要政党で伸びたのは国政で野党第二党の自由民主党でした。同党は、選挙にあたってイラク戦争に反対し、労働党、保守党を攻勢的に批判しました。同党のケネディ党首は地方選開票の翌日、イラク戦争問題が選挙の中心であったことを強調し、自民党を含め「英国は三大政党制になった」と胸を張りました。
総選挙で自民党はここ数回、16―18%の得票ですが、完全小選挙区制のため議席数は3―7%に甘んじてきました。同党は、比例代表制への選挙制度改革を公約しています。
比例代表制導入の運動をすすめている選挙改革協会のケン・リッチー理事長は、「欧州議会選挙は労働党、保守党の二大政党に痛打となった」と指摘し、二大政党制の下で国民の声が政治に反映されにくいと批判します。
同理事長によると、一九九七年以来、いくつかの地方自治体で新たに直接選挙が導入され、そのすべてが比例代表制度だったといいます。六月二十三日にはスコットランド地方議会が中選挙区制を採用することを決めました。同理事長は「より民主的な制度になり、スコットランドの政治文化を変える可能性がある」と指摘します。
より民意を反映する選挙制度導入の声がますます広がると同理事長はみています。
英自由民主党 一九八八年三月に自由党と社会民主党の一部が合併して社会自由民主党となり、八九年十月に自由民主党に改名。リベラル派の自由党は十九世紀には、保守党(トーリー)とともにホイッグ党として二大政党の一角を担いました。二十世紀に労働党ができてからは、保守・労働党の二大政党制のもとで第三党となりました。社会民主党は、労働党の右派が一九八一年に離党して結成した党。 |