日本共産党

2004年7月6日(火)「しんぶん赤旗」

政治のゆがみを土台からただす

本物の改革の党――日本共産党の前進を

東京・日本青年館 志位委員長の訴え


写真

演説する志位和夫委員長=1日

 四日夜のNHK参院選特集「党首は訴える」で一部放映された日本共産党の志位和夫委員長の演説(一日、東京・日本青年館)大要を紹介します。


 私は、選挙戦の争点は大変はっきりしてきたと思います。安心できる年金制度をどうやってつくるのか、消費税の増税を許していいのか、イラクへの自衛隊派兵の問題、そして憲法改定をどう考えるのか――どの問題をとっても、国の進路にかかわる大問題です。それだけに、どの一つをとっても、国民のみなさんの願いにかなった答えを出そうとしたら、日本の政治のゆがみをおおもとからただす改革が必要となるのではないでしょうか。

 そこで私は、みなさんにお願いしたいと思うのです。本物の改革を進める党はどの党か、どの党が伸びたら国民のみなさんの暮らしと平和を守る一番の力となるのか――このことを事実で見極めて選んでいただきたい。このことを心からお願いしたいと思うのであります。(拍手)

暮らし――「財界が主役」の政治を土台からかえてこそ、明るい展望が開けます

 まず、暮らしの問題ですが、国民のみなさんがいま苦しんでいらっしゃること、不安に思っていらっしゃること、どの問題をとっても、根っこをずっとたどっていきますと、「財界が主役」という政治のゆがみにぶつかるのではないでしょうか。

年金問題

ヨーロッパにくらべて貧しい年金――二つの問題をただす改革こそ必要

 年金問題をみてみたいと思います。日本の年金というのは、ヨーロッパに比べて大変貧しいのが特徴です。ヨーロッパに行きますと、フランス、イタリア、ドイツなどの国ぐにで、国民すべてに安心した老後の生活を保障する年金がゆきわたるしくみがつくられていて、年金をもらえないという人は、基本的におりません。私どもが発行している「しんぶん赤旗」のヨーロッパの特派員に聞きますと、ヨーロッパの国ぐにでは「もうすぐ年金生活に入るのが楽しみだ」、こう答える方が多いというんですね。

 ところが、この日本では年金といえば、「老後の先行きが心配だ」という話ばかりです。それではみなさん、日本の年金制度の、いったいどこが問題でしょうか。私は、二つの問題があると思います。

 一つは、もらう年金の額があまりに少なすぎるということです。いま国民年金だけで暮らされているお年寄りが九百万人いらっしゃるけれども、平均の月額は四万六千円です。しかもこれを全部使えるわけではありませんね。介護保険料は天引きでしょう。国民健康保険料も払わなきゃならない。そして医療費だって出ます。そうしましたら、使えるお金は三万円台になってしまいます。これでは、みなさん、とうてい生きていけるという水準にはほど遠いのではないでしょうか。(「そうだ」の声)

 もう一つは、年金の保険料が高すぎるため保険料が払えない、払いたくても払えないという方が、国民年金で一千万人を超えているという問題です。この方がたは、このままにしておいたら、老後の年金がなくなるか、あるいはわずかな年金しかもらえなくなってしまう。国民年金といいましたら、年金制度全体の土台でしょう。ところがこの土台が空洞化している。これは大変な大問題です。

 もらう年金の額が少なすぎる、そして年金の空洞化――改革というのだったら、この二つの問題を本気になってただす改革が、いま求められるのではないでしょうか。(拍手)

税金の使い方と集め方――土台からゆがみをただす改革を

 どうしてこんなに年金制度が貧しいのか。私は、そこには日本の政治が土台からゆがんでいる――税金の使い方と集め方がゆがんでいるという大問題があると思います。

 まず第一に、税金の使い方のゆがみです。ヨーロッパにいきますと、社会保障に使われている税金が公共事業の何倍も多いというのが当たり前です。フランスで三倍、ドイツで五倍、どこでもこっちの方が主役なんですね。

 ところが、この日本では、公共事業に使っているお金が年間四十兆円、社会保障の方は二十五兆円。この「逆立ち」をただし、巨大開発の浪費を一掃して、社会保障を予算の主役にしっかりすえようじゃないかというのが、私たちの提案であります。(大きな拍手)

 第二は、税金の集め方のほうのゆがみです。私が調べて驚いたのは、この十六年間で大企業などが払う法人税が、どんどん減ってるんです。十六年前には、法人税の税収が年間二十八兆円ありました。ところが政府が減税に次ぐ減税をやってきたおかげで、いまは十五兆円しかないのです。大企業などが払う税金が半分になってしまった。ここまで下げた結果、日本は世界でもほんとうに大企業の負担の少ない国になってしまいました。

 日本の大企業の税金と社会保険料の負担の水準というのは、フランスの半分です。ドイツの七割、イギリスの八割。そこまで下がってしまった。これはいくらなんでも下げすぎです。ここまで下げすぎた大企業の負担は、徐々に元に戻して、世間並みの負担をしてもらおうじゃないかというのが、私たちの提案であります。(拍手)

「政治を土台から改革する」――この立場にたてば年金を充実させる展望が

 このように私たちの立場は、「日本の政治を土台から改革する」――この立場にたって、税金の使い方と集め方のゆがみをおおもとからただすというものです。この立場で、税金の使い方をただしますと、年間で約十兆円のお金が出てまいります。税金の集め方を、さきほどの立場でただしますと、年間で約八兆円のお金が入ってきます。あわせますと年間で約十八兆円の新たな財源がつくれます。

 こういう改革をすすめていきますと、年金制度でも、国民のみなさんの新たな負担なしに、年金を充実する道が開かれてまいります。それが日本共産党が提案している「最低保障年金制度」という提案です。この提案では、国民のみなさんすべてに月額五万円の年金を保障する。その土台のうえに、保険料におうじた給付を上乗せします。

 これが実現すると、受け取る年金の額がどうなるか。まず国民年金でお暮らしの方は、全員が年金の増額になります。無年金の方も五万円は保障されます。国民年金を六万円もらってらっしゃる方は、最低保障の五万円に六万円の半分の三万円を上乗せして、八万円になります。国民年金の方は全員が増額となり、平均で二万円から三万円の年金が上積みされます。厚生年金、共済年金をふくめて、年金を受給されているすべての方の八割が、受給額が増え、給付が減る人は一人もおりません(拍手)。これが私たちの提案であります。

 「日本の政治のゆがみを土台から改革する」――この立場に立って、年金でもほんとうに国民が安心できる制度をつくろう、これが日本共産党の提案であります。(長くつづく拍手)

改悪年金法の実施を中止させ、新しい国会で安心できる年金制度を

 それでは他の党はどうかといいますと、政治のゆがみを土台から変えようとする立場がないんですね。勇気もないのです。そうしますと、年金でも答えがでないのです。「負担は上げる、給付は下げる」――これしか答えがなくなっちゃう。

 自民・公明が強行した年金改悪法は、その最悪のあらわれだと私は思います。しかも罪深いのは、それをウソでごまかして国民のみなさんに押しつけようとしていることです。この法律をとおす過程で、政府は、「保険料を毎年上げるけど、これ以上あげない上限を作ります」、「もらう年金を毎年下げるけど、現役世代の50%は保障します」、「百年安心です」と大宣伝してきました。しかし、私たちの追及で、保険料のほうは天井知らずになる、もらう年金は底なしになる、こういう実態が明らかになりました。

 そもそも年金制度で一番大切なのは何でしょう。私は、それは、国民のみなさんの信頼だと思います(拍手)。なにしろ長い命をもつ制度でしょ。国民のみなさんに信頼されない制度というのは、どんな制度でも成り立つはずがありません。ウソでごまかして通したような制度は、これは絶対に続くはずがありません。(「そうだ」の声、拍手)

 こんどの選挙では、ぜひこういう悪い法律をとおした人たちに、国民のみなさんのきびしい審判を下していただいて、新しい国会で改悪年金法の実施を中止させ、国民のみんなの討論で、ほんとうに安心できる年金制度を築いていこうではありませんか。(大きな拍手)

民主党案――給付減、負担増は消費税増税では、国民の立場にたった対案とはいえない

 年金改革をやり直すというさいに、民主党の案はどういうものかということを見ておく必要があると思うんですね。民主党も政府の案には反対しました。ただ、民主党の案を見ますと、給付を毎年下げるということでは変わらないんです。負担増を押しつけるということにも、変わらないんです。違うのは負担の押しつけ方だけです。

 国会の質疑を見ていましたら、自民党の議員がうまいこといっていました。「自民党は国民のみなさんの右のポケットからとる。民主党は左のポケットからとる。それだけの違いだ」というんです(笑い)。つまり、自民党は保険料を上げる、民主党は消費税を上げる、それだけの違いだというのです。国民のポケットからとることにはかわりない。私たちは、大企業などのがま口から出してもらおうと思っています。(拍手)

 実際に民主党が出してきた案を見ますと、消費税を3%上積みするという案になっています。この案で一番喜ぶのは、財界なのです。といいますのは、保険料でしたら、半分は企業がもたないとなりません。しかし、消費税というのは大企業にとってはありがたい税金で、一円も出さなくてすむ。まるまる国民のみなさんにかぶせることができる。これではみなさん、国民の立場にたった対案とはとうていいえないのではないでしょうか。(拍手)

「だれがやっても同じ」ではない――「財界が主役」のゆがみを本気でただす党でこそ

 年金問題については、この間の党首討論で繰り返し議論してまいりました。小泉首相は、あまりの評判の悪さに、こういうことを言い出しました。「これから高齢化がすすむんだから、だれがやっても負担を増やし、給付を減らす、これは同じなんだ」。このことを繰り返し言い出しました。

 しかし、それは違う。日本共産党がやれば、違った答えが出てまいりますね(「そうだ」の声、拍手)。「日本の政治のゆがみを土台から改革する」という立場に立てば、国民のみなさんに新たな負担を求めずに、年金を充実させる道が開かれます。「財界が主役」という政治のゆがみを本気でただせる党でこそ、みなさんとご一緒に、安心できる年金制度をつくることができる。どうかご一緒に、この道を開こうではございませんか。(長く続く拍手)

消費税問題

自民・公明、民主――二〇〇七年度からの増税にむけ、競い合いと、協力の動きが

 このなかで消費税の増税の問題が、熱い焦点になってまいりました。党首討論をやりますと、消費税の増税で一番熱心に旗を振っているのは民主党なんです。民主党の代表はいつも、「民主党は消費税を3%引き上げる案を出している。それなのに、自民党ははっきりしないじゃないか」といって小泉首相を「追及」するんです。それにたいして小泉首相は、「私の任期中には上げません」、こういって答える。あたかも、自民党が消費税増税に「慎重派」であるかのような、格好をしているんですけども、真相はそうではありません。

 自民党、公明党は、昨年十二月に、「税制改正大綱」というのを決めております。そこには、「二〇〇七年度をめどに、消費税を含む抜本的税制改革を実現する」と書いてあります。「実現する」というのは、消費税を実際に上げるということです。とうとう選挙に入って小泉首相は本音をいいだしました。六月二十九日の記者会見で、首相は「消費税増税は必要になる」と明言し、「引き上げの時期や幅について与野党で早く協議を始めたほうがいい」と、具体化のための協議を民主党に呼びかけたのです。事態はここまで切迫してきております。

 みなさん。自民、公明、民主が、競い合い、協力しながら、二〇〇七年度からの消費税増税を、いっしょになってすすめようとしている、これを許していいかどうかが、この選挙の大争点となってきたのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

「福祉のため」という口実――消費税導入でよくなったという福祉が一つでもあるか

 増税をすすめようという勢力は、「福祉のためだからしかたがない」とさかんに言います。しかしみなさん、そもそも福祉というのは、何のためにあるのか。立場の弱い方々の暮らしを支えるために福祉という制度があるのではありませんか。一人では立とうにも立てない、障害者やお年寄りや子どもさん、立場の弱い方々の命と暮らしを、国の責任で支えていくというのが、社会保障のおおもとの精神ではないでしょうか(拍手)。しかし、消費税とはどんな税金か。そうした立場の弱い方々に、一番重くつらくのしかかる税金じゃありませんか。

 たとえば月額五万円の国民年金で暮らしをされているお年寄りを考えてください。五万円といいますと、年収でいって六十万円でしょう。8%の消費税といいましたら、六十万円の年収からだいたい年間五万円の消費税を払うことになります。つまり一カ月分の年金をめしあげてしまう。五万円の年金暮らしのお年寄りから、「福祉のため」と称して、一カ月分の年金をめしあげちゃうというこんなやりかたは、私は、邪道中の邪道だと考えます。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 だいたい、消費税が導入されてからのこの十六年間、医療費は値上げにつぐ値上げ。年金は切り捨てにつぐ切り捨て。介護保険ができたけど、保険料や利用料が重すぎて大変。この十六年間というのは、福祉は“受難”につぐ“受難”の十六年だったのではないでしょうか。(「その通り」の声、拍手)

一家平均で五百万円――庶民がおさめた消費税は大企業減税の穴埋めにつかわれた

 そうしますと、みなさんが払った消費税が、どこにつかわれたのかが大問題であります。私たちが計算してみましたら、この十六年間に、国民のみなさんが払った消費税は累計で、なんと百四十八兆円になります。同じ時期に、大企業などが払う法人税は、どんどん減って、累計で百四十五兆円も減りました。みなさんが苦労して納めた消費税が、まるまる大企業の減税の穴埋めに使われたというのが、ことの真相です。

 みなさんが十六年間で払った消費税の百四十八兆円は、赤ちゃんからお年寄りまで、国民一人あたりで計算すると百二十万円です。四人家族で約五百万円です。五百万円のお金を、大もうけしている大企業のためにプレゼントした。こんなに腹が立つ話はないではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 今度の増税計画も同じなのです。「福祉のため」なんかじゃない、「大企業をもっともうけさせるため」――これが消費税増税の正体であります。

消費税増税は「財界が主役」の政治の最悪のあらわれ――増税反対の声を日本共産党に

 私は、消費税を値上げするというのは、「財界が主役」の政治の最悪のあらわれだと思います。(大きな拍手)

 ですからここでも、「財界が主役」の政治のゆがみをただす、日本共産党のがんばりどころだと思います。「日本の政治のゆがみを土台から改革する」という立場にたてば、消費税に頼らなくても安心できる社会保障制度を築くことができます。ですからみなさん、どうか安心して、増税反対の一票を日本共産党に託してください。よろしくお願いいたします。(「そうだ」の声、長く続く拍手)

平和――憲法をまもり、「アメリカいいなり」の根をたつ政党です

 いま平和の問題でも、不安なことがたくさん広がっておりますが、これは根っこをたどりますと、「アメリカいいなり」の政治という大きなゆがみにぶつかります。

 

多国籍軍参加問題

憲法破りの政治でも、国民をごまかすやり方は許せない

 小泉首相は、この前のブッシュ大統領との会談で、突然、イラク多国籍軍への自衛隊の参加を、約束してしまいました。しかしみなさん、これは何よりも、日本国憲法では説明がつかないことなのです。これまでの政府見解では、「武力の行使をともなう多国籍軍への自衛隊の参加は憲法上許されない」ということで一貫してきました。(「そうだ」の声、拍手)

 この間の、党首会談や一連の党首討論で、この大問題を小泉首相にただしますと、ここでもごまかしを始めるんです。どういうごまかしか。「自衛隊は多国籍軍に参加するけれど、多国籍軍の指揮下には入りません。そのことはアメリカとイギリス政府にも、了解をとりつけてあります。だから憲法違反じゃありません」というのです。そこで私は、小泉首相に、「その了解というのは、いったい誰と誰が取り決めたのか、それをちゃんと明らかにしなかったら、私はとても納得できない」といって、首相の姿勢をただしました。

 しかし、誰と誰が取り決めたのかさえ、小泉首相は、私が何度きいてもいわないのです。私が首相に求めて、政府が出してきた文書でも「了解」の「当事者」は、ワシントンとロンドンにいる日本側の公使と、アメリカ、イギリスのさる「政府高官」で、名前がないんです(笑い)。「名無しのごんべえ」と「名無しのごんべえ」の口約束の「了解」など、何の保証にもならないのは明らかだと、私は思います。(「そうだ」の声、拍手)

 私が許せないのは、ここでもウソとごまかしの政治があることです。年金問題でも、ウソで国民のみなさんをあざむいて、悪い法律を通しました。それにくわえて、憲法破りの政治でも、国民をごまかして自衛隊の多国籍軍への参加という、新しい憲法蹂躙(じゅうりん)の道を一歩すすめる。みなさん、こういう人たちには、政権を担う資格はないといわなければならないのではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

イラク国民が主人公になった国の再建のためにも、自衛隊のすみやかな撤退を

 この間、イラクでは、暫定政府への「主権移譲」がおこなわれました。しかし、侵略戦争をおこない、ファルージャで何百人ものお年寄りや子どもや女性を虐殺し、刑務所の中では身の毛のよだつような拷問を繰り返してきた米軍などが、多国籍軍と名前をかえて居座りつづけている現状は変わらない。これからも米軍は好き勝手に軍事弾圧をおこない、その軍事弾圧に対してイラクの暫定政府は、それを拒否する権限もありません。これでどうして、イラクの国民のみなさんが、「ああ、主権が戻ってきた」と実感できるでしょう。(「そうだ」「いえない」の声)

 やっぱりみなさん、イラクの国民が本当に主人公になった国づくりをすすめようと考えたら、米軍がすみやかに撤退にむけた措置をとることが必要です(「そうだ」の声、拍手)。そして自衛隊はすみやかに撤退せよという声を、いま大きくあげていこうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

憲法改定問題

 こういう憲法を粗末に扱う政治が横行するなかで、憲法の条文そのものを変えてしまう動きがおきていることがたいへん危険です。先日の日曜日のNHKの党首討論会に出ましたら、自民党、民主党、公明党の代表が、それぞれ憲法改定をいいました。憲法九条を変えることが共通したねらいになっています。

憲法九条を改定したら日本はどうなるか――侵略国家、無法国家に身をおとすことに

 それではみなさん、憲法九条改定が、いったい何をねらっているのか。私はここを見定めることが、いま大事だと思います。

 これまでの歴代自民党政府は、憲法九条を踏みつけにして、自衛隊を海外に出すいろいろな法律を作ってきました。PKO法から始まり、ガイドライン法(周辺事態法)、有事法制、イラク派兵法など、いろいろな法律を作ってきました。しかしそれでも憲法九条というのは偉大な力を発揮しているのです。憲法九条があるために、「海外での戦争はできない」――この建前まで政府は崩すことはできませんでした。ですからいまイラクに自衛隊を送っていますけれども、小泉首相は「戦争にいくのじゃありません」「戦闘地域にいくのじゃありません」、こういう言い訳をいわざるをえません。これは憲法九条があるからなのです。

 憲法九条がとりはずされてしまったらどうなるでしょう。これまでの歯止めが一気に失われます。アメリカと一緒に、海外で自由勝手に「戦争をする国」に日本がつくりかえられてしまう。ここがいちばん恐ろしいところではないでしょうか。

 そしてみなさん、さらにもう一つここで見る必要があるのは、アメリカがおこなう戦争というのは、どんな戦争かという問題です。いまアメリカのとっている方針は、「先制攻撃戦略」といって、「やられる前にやっつける」という方針です。アメリカは、イラクでこの方針を実行に移しました。しかしみなさん、「先制攻撃」というのは、国連憲章では絶対やってはならないこととしてきびしく禁止されている侵略戦争そのものなのです。(拍手)

 憲法九条を変えて、アメリカと一緒に「戦争をする国」になるという場合の「戦争」とは、こういう戦争なのです。それはアメリカと一緒に無法な侵略戦争をする国、日本が無法国家に身をおとすことになるということを意味するわけであります。こんなことを、いったい世界の誰が望んでいるでしょうか。こんな道に進んだら、日本はアジアからも世界からも信頼されない国になってしまうことは明らかです。

おびただしい犠牲のうえにつくった世界に誇る宝――国民が手をつなぎ守りぬこう

 そもそも、憲法九条というのは、どうやってつくられたか。そこにはおびただしい痛ましい犠牲があったということを忘れてはならないと思います。

 私は、戦後生まれでありまして、直接の戦争体験はありません。しかし、私の父母の世代の方々で、あの戦争でつらい体験をされなかった方はいらっしゃらないと思います。私も母から、よく戦争の体験を聞かされたものでした。私の母も、当時通っていた女子師範学校が軍需工場にされ、B29の爆撃を受け、多くの級友を失いました。私の母はたまたま生き残ったために、戦後、仕事を持ち、家庭を持ち、私という子どもも生まれた。しかし亡くなってしまった方はそれっきりです。亡くなった母の級友にも、本当なら人生の豊かな喜び、楽しみがあったはずです。しかし一瞬にして、それが無くなってしまう。一瞬にして、かけがえのない人間の人生を無残に引き裂いてしまう。運命を引き裂いてしまう。これが戦争なのだと私は思いました。

 こうしてかけがえのない人生を失った人々が、日本国民で三百十万人でしょう。アジアで二千万人の方がたが亡くなりました。この犠牲の上に、憲法九条を打ちたてたということを、私たちは決して忘れてはならないのではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 私たちの父母の世代から、世界に誇る憲法九条を、私たちの世代がしっかり受け継ぎ、孫子の世代に渡していくことが、私たちの責務だと考えます。どうかみなさん、国民みんなが手をつないで、憲法改悪をやめさせるために力をあわせようではありませんか。(大きな拍手)

日本国民にとって「邪魔物」は憲法か安保か――二十一世紀になくすべきは日米安保条約

 私が、この問題で目を向けていただきたいのは、この憲法改悪の動きにも、根っこに「アメリカいいなり」の政治があるという問題です。いまの憲法改悪の動きは、直接はどこからはじまったかといいますと、アーミテージさんといういまのアメリカの国務副長官が二〇〇〇年にリポートを書いて、憲法を変えろという大号令を発したことが始まりでした。このアーミテージさんは、最近の『文芸春秋』で「憲法九条は日米同盟の邪魔物だ」といっています。しかしどっちが国民にとって「邪魔物」でしょう(「そうだ」の声)。二十一世紀の日本にとって、なくすべき「邪魔物」は憲法九条か日米安保か。なくすべきは九条じゃない、日米安保条約こそなくすべきではないでしょうか。(大きな拍手)

 いまの日本の政党のなかで、憲法改定に対して、明文改憲はもとより、解釈改憲に対しても、どんな改憲の動きに対してもきっぱり反対を貫いているただ一つの政党が日本共産党です。そして「アメリカいいなり」の根っこにある日米安保条約をなくし、ほんとうに独立国といえる日本を築こうと主張している政党も日本共産党だけであります。

 そしてみなさん、党をつくって八十二年、かつてのあの侵略戦争の暗い時代にも、さまざまな迫害を受けながらも、命がけで反戦平和を貫いた、筋金入りの平和の政党が日本共産党であります。(大きな拍手)

 どうかみなさんの平和を願う一票を、こぞって日本共産党にお寄せください。(歓声、大きな拍手)

本物の改革の党をのばしてこそ、暮らしと平和の願いをかなえるたしかな力になる

 さまざまな問題を考えてきましたが、どの問題を見ましても、国民の願いをかなえようとすれば、「財界が主役」、「アメリカいいなり」という政治のゆがみ、おおもとにぶつかります。「二大政党」といわれる勢力には、この二つのゆがみをただす立場もなければ勇気もありません。年金問題でも、消費税の問題でも、憲法の問題でも、ほとんど違いがありません。どの問題でも悪い政治の競い合いになっている。悪い政治を競い合う「二大政党」には、日本の未来はまかせることはできません。日本の政治をよくすることはできません。(大きな拍手)

 みなさん、政治の二つのゆがみにおおもとから改革のメスを入れて、「国民が主人公」の日本を国民とともにめざす本物の改革の党――日本共産党が伸びてこそ、みなさんの暮らしと平和の願いをかなえるいちばん確かな力になります。私はこのことを心から訴えたいと思います。(長く続く拍手)

日本共産党への一票は、政治を動かすたしかな一票になります

 私が、最後に訴えたいのは、日本共産党への一票は、政治を動かすたしかな一票になるということです。

 道理のある主張と行動は、紆余(うよ)曲折があっても政治を動かす力となって働く――これが私たちの確信です。

暮らしを守る論陣と運動――年金問題、雇用問題ではたした役割

 たとえば年金問題です。政府の「百年安心」というウソを見ぬいて、これを明らかにして、この看板を使えなくした。自民党も公明党も、「百年安心」とはもう胸張っていえませんね。そして国民の七割、八割が「年金改革はやり直せ」の声をあげるまで世論をひろげるうえで決定的な役割を果たしたのが、日本共産党の国会議員団でありました。(拍手)

 それから雇用の問題でも、「サービス残業」の問題を国会でいちばん最初にとりあげたのも、日本共産党でした。一九七六年から二十八年間で二百四十回もこの問題での追及をやっております。さすがに政府も音を上げて、是正の通達を出しました。そしてみなさんのたたかいと力をあわせて、二百六十億円の不払い残業代を払わせることができました。(拍手)

平和の流れ広げる外交活動――イラク問題でも、北朝鮮問題でも

 イラク問題でも、戦争が危なくなってきた二〇〇二年の秋から二〇〇三年にかけて、私たちは野党ではありますが、世界政治に働きかける外交活動をおこないました。不破議長は中国を訪問し、当時の江沢民総書記と「戦争反対」での一致を確認しました。緒方国際局長はアラブの諸国をまわって、イラクにものりこんで、当時のフセイン政権に対して、戦争回避のための談判をおこないました。私もインド、スリランカ、パキスタンと、南アジアの三つの国をまわりまして、どの政府とも「戦争反対」で一致をかちとることができました。戦争反対の国際的な多数派をつくるうえで、日本共産党はこういう活動をおこない、世界平和に貢献してきました。本来なら、憲法九条をもつ国――日本の政府がやらなければならない外交活動をおこなったのが、日本共産党でありました。(大きな拍手)

 侵略戦争は強行されましたが、いまやその破たんは明らかになりました。私たちの立場こそ正しかったことは、すでに歴史の判定は下りたと考えるものです。

 そしてもう一つお話ししたいのは、北朝鮮問題です。日本共産党は、拉致問題など北朝鮮の無法行為をずっときびしく追及してきた政党で、国会の質問で初めて政府に拉致疑惑というものを認めさせたのも日本共産党です。同時に、私たちは、この地域でどんなことがあっても戦争をおこしてはならないという立場から、北朝鮮と日本の間に難しい問題があっても、政府と政府の間で話し合いのルートを開いて、なんでも話し合いで物事を解決すべきだ。拉致問題も、核問題も、過去の清算の問題も、すべてを交渉で解決しようという提案を一九九九年の不破委員長(当時)の国会での代表質問いらいおこなってきました。これが現実に政治を動かし、二〇〇二年の日朝首脳会談と日朝平壌宣言、そして国交正常化交渉の再開につながりました。

 もちろん北朝鮮の問題というのは、拉致問題一つとりましても、これからが全面解決にむけて大事な大仕事となります。しかしレールは敷かれた。わが党の主張が、日本の外交を動かしたということを、みなさんにご報告したいと思います。(拍手)

「道理の力」と「草の根の力」があわされば、政治はかならずかえられる

 日本共産党は、野党でありまして、権力を持っているわけではありません。お金もあるわけじゃありません(笑い)。しかし「道理の力」はいちばんあると私は自信を持っています。(拍手)

 もう一つ自信があるものがあります。それは日本の政党の中で、「草の根の力」をいちばん豊かに持っているのが日本共産党だということであります。全国で四十万人を超える日本共産党員、四千人を超える地方議員のみなさんが、がんばっている。そして二百万人ちかい「しんぶん赤旗」の読者のみなさんが、さまざまな形で協力してくださっている。草の根で国民のみなさんの要求を実現する活動にねばり強くとりくんでいる。国民の利益を守ってがんばっている。これは私たちの大きな誇りであります。

 みなさん、「道理の力」と「草の根の力」があわされば、紆余曲折はあっても、政治は必ず変えられる。この確信を持って、未来にむけてのぞもうではありませんか。(大きな拍手)

 二十一世紀は、女性も男性も、お年寄りも子どもも、国民みんなが未来に安心と希望をもって暮らせる日本をつくっていこうではありませんか。(歓声、長く続く拍手)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp