日本共産党

2004年7月6日(火)「しんぶん赤旗」

“年金生活 一番幸せ”

フランス人が語る老後


 フランス人は定年後の年金生活をどう考えているのか。定年前の労働者と年金生活者に聞いてみると、「年金生活入りがいまから楽しみ」「いまがいちばん幸せ」と答えが返ってきました。フランスでも年金制度の改悪に反対するたたかいが続いていますが、老後の生活保障という点では確固としたものがあります。

 (福間憲三 パリ在住 労働社会問題研究家)

定年まであと10年

長期海外旅行が楽しみ

 「定年は十年先のことですが、年金生活への不安はまったくありません。家も十数年前に買ったし、むしろ楽しみです。今でも、二年に一度はバカンスを利用して、長期の海外旅行をしていますが、定年になったらもっと頻繁に行けるでしょう。それが最高の楽しみです」

 こう話すのはパリ郊外クレテイユ市郵便局の管理職、ジャンリュック・スコルバイオリさん(55)。一九七三年、二十四歳で入局し、勤続三十一年。いまは集配業務の管理責任者です。フランスの郵便職員は公務員です。

「給与の75%」

 スコルバイオリさんは昨年、国会で成立した年金「改革」法には反対です。それまでは公務員の場合、拠出期間三十七・五年の勤続で満率の年金受給資格が得られましたが、今年から段階的に延長され、二〇〇八年に民間と同じ四十年間に統一され、二〇一二年には、公務員、民間ともに四十一年間の拠出が満率年金受給資格の条件となります。

 「制度上は六十歳で年金生活に入れますが、満率の年金受給資格を得るための拠出期間が延長されました。私の場合、六十五歳で満率です。そうすれば定年前六カ月の平均給与の70―75%が年金として維持できます。六十五歳まで働くかどうかは、まだ決めていません。高学歴化で就職年齢が遅くなっているなかで、定年六十歳は有名無実になるでしょう」といいます。

8年前から年金生活

本当に待ち遠しかった

 モーリス・ウブラールさん(63)は、パリ近郊の火力発電所の現場に勤務する公共企業、仏電力公社(EDF)の職員でした。三十五年勤めた後、八年前五十五歳で年金生活に入りました。

 「三十五年間、現場作業が中心だったので、仕事はきつかったし、組合の活動もあって忙しく、定年は、不安どころか、本当に待ち遠しかった。年金生活になってからは天国です。県のエネルギー労組活動に積極的に打ち込めるようになったし、エネルギー関連の市民団体にもボランティアで参加しています。それでも時間があるので家族サービスもできるし、日曜大工から家庭菜園まで、今がいちばん幸せといってもいい」と満足気です。

 EDFは、発電や配電の現場で働く人、事務労働者、開発部門の研究者などさまざまな職種で構成される大企業です。規定では(A)不衛生で危険な職、(B)現場作業、(C)事務とそれに準ずる職―という三つに分かれ、待遇もそれぞれ違います。Aの職に十年間勤続した人、またはAB双方の合計で十五年間勤続した人は五十五歳で年金生活に入ることができます。このほか、Aで三年間勤めると拠出期間一年間のボーナス、Bで五年間勤めると同じく一年間のボーナスがつきます。

民営化の動き

 ウブラールさんはこれらの制度を活用して、五十五歳で満率の年金生活(最終賃金の75%)に入りました。

 EDFは昨年の年金「改革」の対象になりませんでしたが、ウブラールさんは民営化の動きを懸念しています。六月二十九日にはEDFとガス公社の民営化法案が国民議会で可決されました。労組はストライキや、料金滞納で電気やガスを切られた貧困者に供給を再開する「ロビンフッド作戦」でたたかっています。

 「これからは上院に働きかけ、大統領には国民投票の実施を呼びかけ、あくまで法案の撤回を求めていきます。民営化されると、職場にも必ず競争が持ち込まれ、雰囲気が変わってしまう危険があります。私がきつい仕事に打ち込めたのは、職場に勤労者の連帯があふれていたからです。これを壊してはなりません。そのためにも、職員の地位を高い水準で保障した公共サービスを守らなければなりません」とウブラールさんは闘志を燃やしています。


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