2004年7月7日(水)「しんぶん赤旗」
六日に閣議了承された「防衛白書」は、「存在する自衛隊から機能する自衛隊」(石破茂防衛庁長官)への変革を掲げ、米国の先制攻撃戦略を世界規模で支えるため、本格的な海外派兵態勢づくりを前面に押し出した内容になっています。
第一に「白書」の全体に貫かれているのは、米世界戦略とそれへの追随・加担を当然視する姿勢です。
国連憲章違反の先制攻撃戦略を打ち出した米国家安全保障戦略(二〇〇二年)を「必要に応じて先制的に行動する」ものと無批判に紹介。その初めての発動であるイラク戦争を「精密誘導兵器、無人偵察機などの先進的な兵器と特殊部隊を含む地上兵力を組み合わせた、圧倒的な情報・スピードを重視した戦術によって、作戦開始以降3週間足らずでイラクの首都バグダッドに到達」と称賛しています。
イラク占領後のファルージャでの掃討作戦を「武装勢力に対する攻勢」と描き、女性や子ども、お年寄りなど七百人以上の民間人を殺害したことにはまったく触れていません。
米軍の無法なイラク戦争とそれに続く不法な占領への加担・合流である自衛隊のイラク派兵については、「日米の安全保障面での協力をさらに緊密かつ実効性あるものとする」とし、日米同盟強化の「意義」を強調。イラク派兵が“日米同盟のため”であることをあからさまに告白しています。
さらに、今後の日米同盟のあり方について、「日米両国による協力関係は、アジア太平洋地域のみならず、むしろ世界における広範な課題を対象とした協力関係であるべきだ」と強調し、世界規模での日米安保体制のいっそうの強化を打ち出しています。
第二に「白書」は、そのための自衛隊海外派兵態勢づくりの方向を具体的に示しています。
小泉・自公政権は現在、「防衛政策」の抜本的転換をはかる「防衛計画の大綱」の見直し作業を、年内を期限に進めています。
検討作業の到達点を詳述した「今後の防衛庁・自衛隊のあり方」(第六章)では、「必要とされる(世界中の)地域に部隊などを迅速に派遣し、継続的に活動を行い得るよう、即応性、機動性、柔軟性などを確保する」と強調。世界各地に戦争をしかける米軍さながらに、自衛隊の海外遠征能力の強化を打ち出しています。
その具体例として、▽「国際活動を実施する上で必要な教育を平素から実施する部隊を保持」▽海上自衛隊の護衛艦部隊を「固定的な編成から柔軟編成を基本とする」▽「国際活動に積極的に対応できるような輸送・補給力を確保し得る体制の構築」―などをあげています。
法制上でも、PKO(国連平和維持活動)やイラク特措法などにもとづく海外派兵が、自衛隊法上の「付随的任務」とされていることについて、「本来任務」への格上げの方向を打ち出しています。
「白書」は、「米国追随」との批判をかわそうと、「国際社会の平和と安定のための活動に主体的・積極的に取り組む」と繰り返しています。しかし、その内実は、米国の先制攻撃戦略への追随・加担でしかありません。それは逆に、「国際社会の平和と安定」を破壊する道です。田中一郎記者