2004年7月7日(水)「しんぶん赤旗」
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年金など社会保障財源のために消費税増税を――。参院選終盤、旗振りをしてきた民主党に、自民・公明や社民の各党幹部も加わって、消費税増税の大合唱の様相となっています。二〇〇七年度からの消費税増税を前提に、「与野党で早く協議を始めたほうがいい」(小泉首相)と言い始め、参院選の大争点となっています。しかし、“福祉のために消費税増税”というのは、どこからみても道理がありません。山田英明記者
立場の弱い国民の命と暮らしを支えるのが福祉です。
買い物のたびに“公平に”税金がとられる消費税。毎日の暮らしに必要なものは、所得の高低でそれほど変わらないため、所得が低く、立場の弱い人ほど、負担が重くなります。これほど、「福祉のため」にふさわしくない税金はありません。
一九九七年、消費税が3%から5%に引き上げられるなど、橋本内閣(当時)によって、九兆円もの負担増が国民に押し付けられました。この負担増は、回復し始めた景気に冷や水を浴びせ、日本経済を失速させました。九七年以降、勤労者世帯の実収入は六年連続で減り続けています。
消費税は「福祉破壊税」であり、「景気破壊税」です。
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一九八九年の導入時にも、「福祉のため」といわれました。しかし、導入後十五年、医療改悪や年金改悪、介護保険制度の改悪など、この間、社会保障は充実させられるどころか、相次いで改悪されてきました。
では、消費税は何に使われてしまったのか。
導入以降、国民が支払った消費税額の累計は約百四十八兆円。同じ時期の法人税の減収分は約百四十五兆円に達します。国民が負担してきた消費税は、大企業などが負担する法人税減収の穴埋めに消えてしまった計算です。
〇七年度までに消費税率を10%に、二五年度までに18%にと提言する日本経団連。その狙いは、いっそう大企業の税と社会保障負担を軽くすることです。日本経団連は労使折半の保険料を軽減、あるいは、なくせと求めるとともに、昨年九月、政治献金のために政党を評価する項目の中に「消費税の引き上げ」とセットで「法人税率を引き下げる」ことを盛り込みました。ここにも、大企業の負担軽減のための庶民増税という本音があらわれています。
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日本共産党は、消費税増税に頼らなくても、社会保障財源を確保する道を提案しています。
公共事業や軍事費など、予算のムダをあらためれば、国、地方あわせて新たに十兆円程度の財源を生み出し、国民のくらしと社会保障に振り向けることができます。
空前の利益をあげる大企業に、ヨーロッパ並みの税と社会保障の負担を求めれば、国、地方あわせて約八兆円の財源を計画的に確保することができます。
財界いいなりのまま消費税増税に社会保障財源を求めるのではなく、税金の使い方、集め方を「国民第一」に土台から改革すれば、消費税増税に頼らなくても、安心できる社会保障制度を築くことができます。
■社会保障の財源について「消費税が大きな財源になるという方向だろう」(小泉純一郎首相、「朝日」6月30日付)
■「(消費税率引き上げの)時期や幅を含めて与野党で早く協議を始めたほうがいい」(小泉首相、「読売」6月30日付)
■消費税の上げ幅について「必要な%」「07年度以降は必要であれば(消費税を)上げざるをえない」(自民党・安倍晋三幹事長、7月4日、フジテレビ「報道2001」)
■消費税の上げ幅について「協議して積極的に」「社会保障全般からみるとこの時期(再来年)までには消費税というものを考えなければならない」(公明党・冬柴鉄三幹事長、同)
■消費税の上げ幅について「目的限定で3%」「(年金の)基礎部分は消費税3%でやる」(民主党・藤井裕久幹事長、同)
■社会保障全体の財源としての消費税率の上げ幅について「3%ぐらいだろう」(社民党・阿部知子政審会長、「東京」7月2日付)
消費税増税派は「ヨーロッパは消費税率が高い、(消費税増税にふれないで社会保障の)財源はどうするのか」と言いだしています。しかし、ヨーロッパの社会保障を支える財源の中心は、消費税ではありません。
庶民の生活必需品にかかる消費税率は、どの国も軽減税率やゼロ税率を適用し低くしています。そのうえで、企業に応分の負担を求めていることが特徴です。
例えばイギリスでは、標準税率は17・5%ですが、食料品にはゼロ税率(まったく消費税がかからないこと)が適用されています(財務省資料、二〇〇四年一月現在)。消費税収は国民総生産(GDP、二〇〇〇年)の6・9%という水準です。
一方、スウェーデンの消費税の標準税率は25%(〇四年一月現在)です。しかし、消費税収はGDP比7・2%(二〇〇〇年)で、同国の公的支出の財源の約八分の一にすぎません。逆に、企業の税と社会保障負担はGDP比16%になっています。企業の税と社会保障負担を軽減し、その肩がわりの財源として消費税増税を求める日本の財界などのやり方とは、根本的に異なります。