日本共産党

2004年7月7日(水)「しんぶん赤旗」

世界で光る 憲法九条

各国で注目


 「戦争のない世界」を目指す日本国憲法の第9条は、2度の世界大戦と原爆使用までゆきついた20世紀の痛苦の教訓、および再び戦争はしないという日本国民の決意から生まれました。21世紀に入り、イラク戦争を経て、第9条は世界で輝きを増しています。

中国

抗日戦争記念館に条文展示

参観者 「なぜ変えようとするのか」

 北京市郊外にある中国人民抗日戦争記念館。日本の侵略とのたたかいを思い起こし未来に生かそうと一九八七年に創設された同館内に、日本国憲法第九条が展示されています。

 抗日戦争最終盤の一九四三年から現代までの写真や資料にあてられた第三展示室内の「過去を忘れず将来の教訓に」のコーナー。七二年の日中国交正常化時の写真とともに、第九条の拡大写真が掲げられ、「一九四七年、日本が制定した新憲法第二章第九条」との説明がついています。

 展示の前で立ちどまった参観者の一人、李小軍さん(30)がいいます。

 「第九条のことは学校で教えられました。いま日本で右翼的な流れが強まっていることも知っています。日本の軍拡や海外派兵は、中国だけでなく、韓国やシンガポールでもたいへん懸念されています。どうして日本はドイツのように侵略戦争をまともに反省せず、この憲法を変えようとしているんでしょう」

 確認のため名前を紙に書いてもらうと、「一筆いいですか」と李さん。「勿忘歴史、自強不息(歴史を忘れることなく、たゆみなく努力を)」と書き添えました。

 第九条の展示について館長秘書の李宗遠さんは言います。「これは、展示を一部改装した九七年からあります。今の日本の憲法改悪、特に第九条をないがしろにしようとする動きに私たちは不安と怒りをもっています。平和外交を掲げる中国が、憲法第九条をどんなに重視しているか分かってほしい」 (北京=小寺松雄 写真も)

イタリア

欧州憲法に戦争放棄条項を

下院議会が決議

 「欧州連合(EU)憲法へのイタリア憲法第一一条の挿入を促進する」―イタリア下院は五月五日、こんな決議を採択し、イタリア国民を驚かせました。

 憲法第一一条は「国際紛争を解決する手段としての戦争を否認する」と宣言。日本国憲法第九条一項と共通する内容です。これをEU二十五カ国全体の憲法に取り入れようというのです。

 プローディ欧州委員会委員長(元イタリア首相)は今年三月、イタリア憲法第一一条は「五十年以上たっても、その価値をまったく失っておらず、むしろ時がたつにつれて、ますます強い現代性を帯びてきた」と述べています(伊紙コリエーレ・デラ・セラ三月二十七日付)。

 また決議提案者の一人である左翼民主(党)のフォレナ議員も「第一一条はフランス、ドイツ、ポルトガルその他の欧州諸国の憲法にも見いだせる。それは、今日の国際舞台を支配している戦争とテロの政治に対抗できる、平和勢力としてのEUを建設するための基本です」と語っています。

 残念ながら、イタリア憲法の第一一条は、六月中旬に採択されたEU憲法に盛り込まれませんでした。しかし、運動を進めてきた人々は、イタリア下院での同決議採択を高く評価しています。

 フラビオ・ロッティ「平和のテーブル」全国評議会調整役は次のように述べています。

 「下院の議席では右派が多数だが、決議が通った。決議案に反対すれば、国民の前で自国憲法の戦争拒否条項を否定することになるからだ。第一一条の価値は、国民に広く共有されている。右派の中には、この条項を嫌う勢力もいるが、それを削除する提案は誰もできない。

 第一一条はEU憲法には盛り込まれなかったが、運動はやめない。これからも日本のみなさんと協力していきたい」

 イタリアの平和団体は今後、欧州議会にたいし、イタリア憲法第一一条と同趣旨の宣言を採択するよう求める運動を広げる計画です。(島田峰隆・党国際局員)


戦争放棄・軍隊不保持かかげる各国の憲法

 一九二八年に締結された不戦条約(戦争放棄に関する条約)などを経て、四五年にできた国連憲章は、「武力による威嚇又は武力の行使」の禁止(第二条)を掲げました。以下は、戦争放棄や軍隊不保持を明記した各国憲法の一部です(あいうえお順)。

 ●イタリア憲法11条(一九四八年施行)

 イタリアは、他国民の自由を侵害する手段としての戦争、および国際紛争を解決する手段としての戦争を否認する。他国と同等の条件のもとで、国家間の平和と正義を保障する体制に必要ならば、主権の制限に同意する。この目的をもつ国際組織を促進し支援する。

 ●韓国憲法5条1項(一九四八年制定時は6条1項)

 韓国は、国際平和の維持に努力し、侵略戦争を否認する。

 ●コスタリカ憲法12条(一九四九年公布)

 軍は、恒常的組織としては、禁止する。

 ●ドイツ憲法26条1項(一九四九年施行)

 諸国民の平和的共存を阻害するおそれがあり、かつ、このような意図でなされた行為、特に侵略戦争の遂行を準備する行為は、違憲である。これらの行為は処罰される。

 ●フィリピン憲法2条(一九八七年新憲法公布)

 フィリピンは、国策遂行の手段としての戦争を放棄し、一般に受諾された国際法の諸原則を国内法の一部として採用し、平和・平等・正義・自由・協力・すべての国の友好の政策を固く支持する。


五月五日の伊下院決議(大要)

 下院は、ブッシュ米政権によってイラクで採用された予防戦争ドクトリンの失敗が明確であり、それが国際情勢の不安定化をもたらしたこと、

 憲法第一一条が、民族間の紛争の解決手段としての戦争にわが国が反対する根拠となっていること、

 同条項の普遍性を考慮すれば、欧州憲法の制定過程でそうした原則が排除されえないこと、を確認し、政府に以下のことを義務づける。

 可能な交渉の場を活用し、わが国の憲法第一一条の内容を欧州憲法に盛り込むよう働きかけること。

「九条にならえ」

ハーグ世界市民平和会議が採択

 「日本の憲法第九条のように、政府の戦争行為を禁止させよう」―一九九九年五月にオランダのハーグで開かれたハーグ世界市民平和会議は、こう呼びかける決議を採択しました。

 会議は、一八九九年に開かれた第一回ハーグ平和会議の百周年を記念して、各国の市民運動、平和組織、法律家が集まって開催したもの。「二十一世紀の平和と正義を求める課題」と題された採択文書の「公正な世界秩序のための十項目の行動指針」の第一項で、日本国憲法第九条に言及しました。

「第九条の会」

91年米国で発足オーバービー氏語る

 米オハイオ大学名誉教授のチャールズ・オーバービーさんは、「憲法第九条こそ本当の世界秩序の土台」だと考え、一九九一年に「第九条の会」を米国で発足させました。昨年十月の本紙とのインタビューで次のように語っています。

 日本国憲法は、(第二次世界大戦の)これらのあらゆる暴力の後に、このひどい暴力を終わらせようという「人類の叫び」として登場しました。

 小泉首相は、軍事力についてブッシュ大統領と同じような思考様式を持っています。彼らは、軍事力では解決できない問題に対して、軍事力を行使しようとしています。

 憲法第九条は、「戦争の支配」に取って代わる「法の支配」という全人類の力強い理想と知恵の声明です。日本政府がそれを破壊することになれば、日本人だけでなく全人類にとっての悲劇です。

 日本政府や米国政府に対し、第九条を葬るなと声を上げ続けましょう。あなたたち日本人のためだけでなく、この地球という惑星のためにも。


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