2004年7月8日(木)「しんぶん赤旗」
イラクの歳入の九割以上を占める石油。ところが、フセイン政権打倒後の米国占領期間に石油収入の管理がずさんな状態におかれ、その責任をとらないままに「主権移譲」で連合国暫定当局(CPA)が解散したことが、いま大きな問題になっています。
CPAは五月末までのイラクの石油収入を百億ドルだというが、われわれの計算では百三十億ドルあるはず。三十億ドル(三千三百億円)はどこに行ったのか―英国の民間援助団体クリスチャン・エイドは六月末、こう告発する報告書を発表しました。
「疑惑をあおる―連合軍とイラクの数十億の石油」と題された同報告。昨年五月に採択された国連安保理決議一四八三でイラクの石油収入は「イラク国民の利益のために使う」との条件でCPAが管理すると決まったにもかかわらず、CPAの対応が極めてずさんだったと指摘しています。
まず正確な統計に不可欠な原油採掘・販売量の計測が満足になされないままでした。計測機器は、湾岸戦争後の対イラク経済制裁下で壊れて放置されたまま。クリスチャン・エイドなどの要請にもかかわらず、CPAは今年四月末まで、これに手をつけませんでした。
安保理決議一四八三は、イラクの石油収入を積み立てるイラク開発基金(DFI)をCPAが適正に活用しているか監督するため、国際諮問監視委員会の設置を決めました。ところが、この機関の権限を制限しようとする米国の抵抗により、同委員会は実質的な活動を始めることができませんでした。
ようやく今年四月になって、会計会社KPMGをDFIの監査役とすることが発表されました。しかし、同社が活動を始めたのは、六月末の「主権移譲」の数週間前。DFIを正しく管理していたかどうかが明らかにされないまま、CPAは解散。CPA文民行政官を務めたブレマー氏は直ちにイラクを離れてしまいました。
クリスチャン・エイドは、イラクで戦争請負業をする米国のハリバートン社への支払いもDFIの金で行われてきたと指摘しています。
英国ではこの問題を野党、自由民主党などが提起。英国政府の責任を追及しています。しかしクリスチャン・エイドによれば、英外務省報道官は、CPAの責任問題は「厄介なもの」だと認めつつ、CPAがすでに解散してしまったので、それに説明を求めることは困難だとしています。
坂口明記者