2004年7月11日(日)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】米上院情報特別委員会(パット・ロバーツ委員長)は九日、中央情報局(CIA)があいまいな証拠をもとにイラクの大量破壊兵器を脅威と結論づけていたことは「誤り」だったと断罪する報告書を発表しました。
米ブッシュ政権がイラク戦争遂行の最大の根拠にしていた大量破壊兵器の脅威が米議会で明確に否定されたことで、内外の批判を浴びる同政権がさらに打撃を受けるのは必至です。
五百ページ以上にわたる報告書は、「(大量破壊兵器の脅威があるという評価は)合理性に欠け、入手した情報にてらしても証明できるものではない」「情報分野の分析官、収集担当、管理者らは、あいまいな証拠をもって大量破壊兵器計画があると最終的に評価した。大量破壊兵器開発計画がないという証拠を過小評価もしくは無視した」として、ブッシュ政権が対イラク戦争を開始しやすいように「誇張された」情報で結論づけたと批判しました。
また、問題は上層部のずさんな組織運営にあるなどとして、テネットCIA長官(八日辞任)を非難しました。イラクのフセイン前政権と国際テロ組織アルカイダとの関与についても、「証拠はない」と指摘し、戦争開始のもう一つの理由についても完全に否定しました。
イラクで大量破壊兵器の捜索にあたっていた米国のイラク調査グループ(ISG)、デビッド・ケイ前責任者(元CIA特別顧問)が今年はじめ、議会で大量破壊兵器は存在しないと証言して大きな反響をよびましたが、今回発表された超党派による議会特別委の報告も、戦争の“大義”を真っ向から否定しています。十一月に大統領選挙を控えるブッシュ共和党政権にとって新たな逆風となる可能性があります。
何よりも今回の報告で、イラクのフセイン前政権による大量破壊兵器保有とテロリスト支援についてまったく根拠がないと議会が断定した意味は大きく、イラク駐留連合軍・多国籍軍の犠牲者が千人を超えたこととあいまって、政権批判がさらに強まるのは必至です。
誇張された情報をもとに他国への侵略・占領をおこなった米国に無条件で賛成し、自衛隊まで派遣した小泉政権の姿勢も問われます。
報告は、「大量破壊兵器に関して、政権担当者が脅しや圧力、影響力を(情報)分析官に行使し結論を変えさせたとの証拠を見つけられなかった」と指摘。さらにロバーツ委員長が九日の記者会見で「情報(組織)全体の失敗」とのべたように、情報特別委は中央情報局(CIA)をはじめとする情報担当部局にすべて責任をかぶせ、戦争を遂行したブッシュ政権指導部の批判は控えるなど不十分さも残ります。
上院で共和党議員が多数を占めている関係上、報告書は、ブッシュ政権が誇張情報を戦争突入の理由に使ったという批判にまで踏み込んでいません。
しかし、CIA職員の間では、情報を誇張したのはチェイニー副大統領ら政権指導部からの圧力があったからだという声が絶えず、疑惑は残ったままです。
(ワシントン=遠藤誠二)