2004年7月13日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】戦争に先立ってイラク大量破壊兵器の調査にあたった国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス前委員長は、大量破壊兵器の調査には国連機関の方が各国情報機関よりもふさわしいとの認識を示しました。
米政権がイラク戦争の「大義」とした大量破壊兵器に関する米情報のでたらめさは、九日の米議会報告でも確認されました。
しかし、開戦前に国連査察が有効に機能していたにもかかわらず、それを押しつぶして米英両国が戦争に突入したことを批判する声は、米国内ではなお少数にとどまっています。
ブリクス氏は、九日に発表された『アームズ・コントロール・トゥデイ』誌(米NGO「軍備管理協会」発行)のインタビューで、自身の体験を交えながら米英両国を批判しました。
「情報機関が、兵器の存在を示す情報を挙げるようにとの期待を感じ取っていたことは明らかだ。米英両国ともに、政権はそれを求めていたのだから」
「政府は(政策を)売り込むために、都合のいい現実をつくりたがる。事実関係のあいまいなことを何度も主張し、バーチャルリアリティー(架空の現実)をつくり出す。イラクがそれだ」
ブリクス氏は、国連安保理が米・英・スペイン提出の決議案を前にして、戦争をあくまで認めなかったことを、安保理にとって「名誉」であり「よかった」と語りました。同時に、同氏自身は戦争に反対すると安保理に述べたことはないとし、兵器の存在に関する「証拠の問題では、黙っているわけにいかなかった」と言います。
査察は「よく言ってもムダだ」とのチェイニー米副大統領の主張を、「明らかに誤りだ」と批判し、査察官は各国情報機関よりも「現実に迫っていた」とブリクス氏。
その要因として、(1)安保理は査察官に「プロの仕事をし、正確に報告する」よう求めた(2)国際公務員としての査察官は政策決定には携わらない―からだと言います。
パウエル米国務長官は昨年二月に安保理で、イラク疑惑の「決定的証拠」を次々に挙げた悪名高い演説を行いました。この演説には、「電話盗聴などは確認しようがなかったが、疑いのあるものがいくつも出てきた」「私が自分を責めるとすれば、もっと大きな声で言わなかったことぐらい」と語ります。
戦争に突っ込まず、査察を続けていたらどうか? 同氏はこの問いに、(1)米英が示したあらゆる現場を調査し、兵器がみつからなかったことを報告できたはずだ(2)兵器開発にかかわった科学者へのインタビューから問題はよりはっきりしたはずだ―と指摘。長期の監視継続には新たな国連決議も必要なく、イラクの大量破壊兵器は「封じ込めた」と言います。