日本共産党

2004年7月14日(水)「しんぶん赤旗」

社保審部会

統合の賛否分かれるなか

不安置き去り 「見切り発車」


 介護保険と障害者の支援費制度の統合について賛否がさまざまに分かれているなか、十三日の社会保障審議会障害者部会は「現実的な選択肢の一つ」として見切り発車の形で中間報告をまとめました。

 「中間報告は議論をスタートさせるためのものか、統合へ厚労省が一歩踏み出すという意味なのか」。この日の会合でも最後まで、委員から不安の声が相次ぎました。

若年層もいるのに

 介護保険と支援費制度は、財源や利用者負担のあり方などのしくみが大きく異なります。肝心のサービス内容も、高齢者と障害者では求められるものが違います。介護保険は、高齢者への介護の必要度によってサービスの提供量(支給額)が区分されています。しかし障害者は高齢者だけではなく若年層も含まれ、障害の種類、程度によって介護の質はさまざまです。

 「全身性などの重度障害者が必要とするサービスを、介護保険ではまかないきれない」「介護保険の要介護認定基準で障害者がきちんと認定されるのか」などの不安が、障害者団体などから繰り返し出されてきました。しかし厚労省側は、こうした不安には答えず、「制度設計は秋ごろにならないと出せない」と先送りしています。

 厚労省は当初、障害者福祉に必要な施策を議論していけば、おのずとそれにふさわしい財源の在り方、介護保険が必要かどうか、議論が整理されていくと説明していました。しかし結局は、サービスを過小に見込んだため起きた深刻な支援費制度の予算不足問題を回避するため、「統合」論議を急がせました。背景には、小泉内閣の「三位一体改革」による補助金削減方針を厚生労働省も受け入れていることがあります。

 「統合」によって具体的な介助サービスがどうなるかは、障害者が地域で暮らしていく上で死活問題ともなります。そうしたことを知らされないまま、統合の是非のみを迫る厚労省にたいし障害者は不安を募らせます。

充実の保障はなし

 サービスを利用した場合の自己負担も、支援費制度は障害者本人の所得に応じた額(応能負担)となっていますが、介護保険は原則一割負担です。さらに財政制度等審議会などでは二割、三割負担へ引き上げることも検討されています。

 今月六日には、介護保険との統合にあたっての支援費制度の見直しとして、長時間介助が必要な人の在宅サービスの利用金額に上限を設ける「包括的な報酬体系」も打ち出されました。サービス充実の保障は何もありません。厚労省は性急な統合に反対する障害者の声に真剣に耳を傾けるべきです。江刺尚子記者


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