2004年7月14日(水)「しんぶん赤旗」
イラクでフィリピン人労働者が武装集団に拘束された問題をめぐり、フィリピンでは人質の解放とあわせイラクからのフィリピン軍撤退を求める声が高まっており、六月三十日に発足したばかりのアロヨ新政権の対応が問われています。
人質になっているのはルソン島中部パンパンガ州出身のトラック運転手アンヘロ・デラクルス氏(46)。イラク駐留米軍施設関連の仕事を請け負うサウジアラビアの会社に所属し、中部ファルージャ付近で拘束されました。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは七日、武装集団が同氏を拘束した場面のビデオを放映。武装集団は、フィリピン軍が七十二時間以内に撤退しなければ人質を殺害すると発表していました。
これに対しフィリピン大統領府報道官は十日、イラクに派遣している部隊を八月二十日に撤退させると声明。一時はデラクルス氏が解放されたとの報道もありましたが、それは誤報であることが確認されました。
現在、武装勢力側は新たに今月二十日までにフィリピン軍部隊を撤退させるよう要求。応じなければ人質を殺害すると警告しています。
フィリピンのセギス外務次官は十二日、アルジャジーラで「できるだけ早く」フィリピン軍を撤退させると表明しました。
アロヨ大統領はイラク戦争開戦直後に米国支持を表明。二〇〇三年八月末からイラクの「人道支援」や「治安維持」のため、国軍兵士、警察官、医師ら九十六人を派遣しました。現在は国軍兵士、警察官ら五十一人が派遣されており、この部隊の駐留期限が八月二十日となっていました。
フィリピンでは政府の出稼ぎ推進政策で、六百万人から七百万人が海外で働いています。出稼ぎ労働者の海外からの送金は国内総生産(GDP)の約10%を占め、国の経済と国民生活を支える一つの柱となっています。
今回の事件はフィリピン社会に衝撃を広げており、相互防衛条約を結ぶ米国との「同盟関係」を最優先してきたアロヨ政権は厳しい選択を迫られています。
宮崎清明記者