日本共産党

2004年7月14日(水)「しんぶん赤旗」

急いで女性差別解消を

大きな意味持つ国連の新しい勧告 具体化迫られる日本政府

党女性委員会副責任者 広井暢子さんに聞く


 国連の女性差別撤廃委員会は今年、新しい勧告を採択しました。その内容は? 日本の女性にとってどういう意味をもつのか? 日本共産党女性委員会副責任者の広井暢子(のぶこ)さんに聞きました。

「暫定的特別 措置」活用し

 ――今回の勧告は、どうして出されたのですか。その特徴は何ですか。

 国連で女性差別撤廃条約が採択(一九七九年)されて二十五年ですが、日本はじめ各国の事実上の平等のための措置はなかなかすすんでいません。そのために条約第四条第一項「暫定的特別措置」を十分に活用してほしいと今回の勧告(一般的勧告二五号)がだされました。

 特に、条約の概念、締約国の義務などを、女性差別撤廃委員会がどう考えているのか、勧告はその理念・見解から詳しく述べています。国際法の一般的基準は男性と女性の双方を守るものです。しかしこの条約は、「女性に対する差別に焦点をあてている」条約である、と。そして実質上の平等を達成するためには、形式的なやり方では不十分だと指摘しています。女性に同じ待遇を保障するだけではなく、すでに違いがある問題を解決するためには男女で違った待遇も必要だとしているんですね。

 例えば、日本の働き方をみても男性を基準に社会のシステムがつくられていますよね。長時間労働や遠隔地転勤ができなければ一人前の正社員ではないというようなね。歴史的につくられてきたこの男性本位の枠組みを基礎にするのではなく、機構やシステムを変えることが必要だともいっているんです。

 そして「結果の平等」を実現する過程で暫定的特別措置を適用することは、女性に対する「実質的な平等を実現する手段の一つ」だと強調しています。

母性保護は恒久的な性格の措置

 ――暫定的特別措置とは、どんなものですか。

 条約四条の暫定的な特別措置の規定には、目的が違う二つの項目があります。一つは、男性との事実上の平等を実現するためにとる措置は、平等が実現したらその暫定措置はいらなくなるとしています。例えば、企業が女性の採用・雇用・昇進、役職への登用、審議会への登用で数的目標などもつことなどですね。

 もう一つは、母性を保護するためにとる特別措置です。これは「科学上および技術上の知識が修正を正当とするときまで、恒久的な性格を持つ」としています。母性保護は恒久的性格の措置だというのです。

 「暫定的特別措置」を表現するのに各国で「アファーマティブ・アクション」(積極的改善措置)「ポジティブ・アクション」(同)などいろいろな用語が使われてきました。委員会は「『暫定的特別措置』という用語のみを使用する」としました。あいまいさを残さないということですね。「暫定的」「特別」「措置」とはと、その用語の意味や解釈まで明確にして、理解をうながしています。

条約は拘束力持つ人権規定

 ――日本の私たちにはどんな意味がありますか。

 国連の女性差別撤廃委員会は、昨年夏、日本の女性の地位を引き上げ、差別を解消するために、暫定的特別措置をとりなさい、活用しなさいという勧告を日本政府に出しています。審議会など公的活動分野や政策決定過程に女性の参加が低い問題とともに、男女の賃金格差や女性労働者にパート雇用が多く賃金が低いことなどを指摘し、暫定的特別措置をとって格差の是正をはかるようにといっているんですね。

 日本は、国連開発計画報告の女性の社会進出度を示す数値でも、四十四位と遅れていますからね。

 日本政府は、今回の勧告とあわせて、どんな行動計画をつくり、どんな措置をとったのか、とらなかったとすればなぜかなど、詳細な報告が求められることになります。

 政府のいう男女共同参画社会は、男女の平等ではなく、あくまで「参画する機会」の確保です。それにとどまらず“事実上の平等”をどう保障するのか。政府はこれまで、勧告は「法的拘束力を有するものではない」という態度でしたが、これは条約批准国としては義務放棄です。

 近年の女性差別撤廃委員会の審議では、条約は「拘束力のある人権規定」であり、女性差別撤廃のとりくみの中心的役割をもつと強調されています。いろんな潮流があるけれど、あくまで条約を基本にということですね。日本でも、男女雇用機会均等法の改正はじめ、条約の内容を具体的に実施させるとりくみに生かし前進させたいですね。


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