2004年7月17日(土)「しんぶん赤旗」
年金改悪法の条文に新たに多数のミスが見つかったことは、関係者の処分ではすまされない重大問題です。条文ミスの発端は、政府自らすすんで発表したものではなく、国会閉会直後の六月二十三日のマスコミ報道でした。このなかで加給年金にかかわる厚生年金法第四四条での修正漏れが指摘され、その後、細田官房長官の指示を受けて厚生労働省と内閣法制局が条文全体を改めて精査していたものです。
そもそも今回の年金改悪法には、これから十四年間連続でおこなわれる保険料引き上げ、約二十年にわたる長期の給付削減という、かつてない規模の大改悪がもりこまれました。給付を「自動削減」するための「マクロ経済スライド」という新たな仕組みも導入され、提案された改悪の条文(要綱を含む)は千ページを超え、電話帳なみの長大なものとなりました。それだけに国会提出にあたり、より念入りな点検が求められていたはずです。
しかも、これまでほぼ五年に一度の「年金改革」でおこなわれてきた、保険料・給付改定の国会審議を今回でやめるとしたのですから、条文ミスなど許されない法案審議でした。
それがミスゼロどころか、調べてみればあとからあとからゾロゾロとミスが発覚。まともに読み込んで点検していたのかどうかさえ疑わせる欠陥条文だったのです。形式的にも手続き的にも国会提出にたえられる法案だったのか、はじめに成立ありきで日程に間に合わせるため、まともな条文点検もなく時間切れで提案されたのではないか、徹底的な究明が必要です。
これだけ多数のミスを修正の報告だけですむはずがありません。法案審議のやり直しは当然です。
しかも法律の内容の点でも“保険料引き上げに上限・給付削減は50%で歯止め”という「改革」の二枚看板が偽りだったり、出生率の公表を成立後まで隠したり、政府のでたらめな対応が次々と明らかになっています。
だからこそ、先の参院選では小泉内閣にたいして国民の厳しい審判が下され、選挙後の世論調査(「朝日」十四日付)でも改悪法の白紙撤回を求める回答が八割を占めたのです。
議論をやり直せというのが国民多数の声です。この声にしたがって政府、与党は国会できちんと一からやり直すべきです。
江刺尚子記者