2004年7月18日(日)「しんぶん赤旗」
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ドイツ政府はこのほど、三歳までの子どもの保育施設拡充に来年から着手、希望者全員入所の二〇一〇年達成を目指す新法案を閣議決定しました。保育施設を他の欧州諸国の水準にまで高めることで働く両親を支援し、同国の出生率を改善することが狙いです。
シュミット家庭相は十四日の閣議後の記者会見で、「この法案でドイツは子どもを忌避する国から子どもを歓迎する国に変わる」と強調しました。ドイツの合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの平均数)は〇一年の統計で1・29と世界でも最低の水準に落ち込んでいます。
ドイツの旧東独部では旧体制時代には90%の女性が働いていました。現在でも州法で行政に保育義務が規定されており、ゼロ歳から三歳までの保育施設入所児童は全体の37%に達しています。これに対し旧西独部ではわずか2・7%、全国平均でも8・5%と欧州諸国の中で最も低くなっています。
政府の計画は、旧西独部では現在六万人の保育所収容能力を〇六年に一挙に倍の十二万人に増加。さらに一〇年までに二十三万人にまで増やし、両親が勤労するか、職業訓練を受けている希望児童全員の収容を目指します。旧東独部については施設の改善などを進める方針。
政府は財源としては、来年一月から実施する失業扶助と社会扶助の統合による自治体の負担減年間二十五億ユーロ(約三千四百億円)を財源とし、最終的にこのうち年間十五億ユーロ(約二千三百億円)を充てる方針です。自治体は計画や推進状況を報告する義務はありますが、保育を必要とする子どもの入所義務化などの法的措置は一〇年まで見送られました。
政府が社会福祉削減による余剰財源を計画実施に充てようとしていることに自治体は反発、労働組合も保育施設改善のためには国や自治体の保育義務を法的に規定すべきだと主張しています。
ドイツ都市会議、ドイツ郡会議、ドイツ市町村連盟の三自治体団体は十四日、共同声明を発表、「自治体は保育施設拡充のための努力を行っている」と強調、社会福祉制度変更による財源だけでは施設拡充には不十分だとして、独自の財源を要求しました。またドイツ教育学術労働組合(GEW)は、政府の法案を「基本的には歓迎する」としながらも、「フランスでは四人に一人、スウェーデンでは三人に一人が保育施設に入っているのに、ドイツでは二〇一〇年になって五人に一人にしかならない」と計画自体の後進性を批判、保育士の労働条件や保育条件の改善のため、保育義務を法律で明記するよう求めました。
夏目雅至記者 写真も