2004年7月19日(月)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】アラブ諸国ではイラク派兵を拒否し、多国籍軍の早期撤退を求める声が強まっています。
アラブ連盟(二十一カ国とパレスチナ自治政府が加盟)のムーサ事務局長は十六日、訪問先のウィーンで記者団にたいし、イラクに現在必要なのは真の主権の移譲であり、多国籍軍の早期撤退であると述べました。
同事務局長は爆破テロや外国人誘拐の中止を呼びかけるとともに、「イラクにおける抵抗の継続は、同国が現在置かれた状況のもとでは当然のことである」「(状況を改善するためには)イラク人にたいし主権を移譲することが死活的に重要だ」と述べ、占領の実質的な継続が混乱の根源であるとの認識を示しました。そのうえでイラク暫定政府にたいし、「多国籍軍撤退の日程表」を示すことを要請しました。
イラク派兵の可能性を表明していたイエメンのバジャンマル首相は十五日、同国の首都サヌアでヨルダンのファエズ首相と会談後に記者会見。「自軍が参加するのはイラク人支援を目的とした平和維持活動であり、米国を手助けするためではない」「米軍とともにイラクに存在することは不可能である」と明言しました。
ファエズ首相も「イラク危機の解決策は、イラク人にたいする主権の移譲にある」と述べ、実質的な占領状態の終結を求めました。
一方、アラブでは、フィリピンやタイがイラク撤退を表明し、実際に撤退を開始したことへの反響も広がっており、サウジアラビアのアルリヤド紙十七日付は、「イラクから連合軍が逃げていく」との論評記事を掲載し、次のように指摘しました。
「この間、米英で相次ぎ明らかになったイラク戦争前夜の大量破壊兵器情報の欠陥が連合軍の撤退を促している」「フィリピンはゲームを続けることで自国民を犠牲にするよりは撤退を選んだ。米国はあらゆる手段で同盟国に(駐留継続の)圧力をかけるであろうが、それがハッピーエンドとなるとは思えない」