2004年7月21日(水)「しんぶん赤旗」
厚生労働省は、医療制度の「抜本改革」として新しい高齢者医療制度をつくるため、検討をすすめています。七十一歳以上を対象にした現在の老人保健制度を廃止し、七十五歳以上のお年寄りを対象に独立した保険制度をつくるというものです。
現在、社会保障審議会の医療保険部会で議論されており、二〇〇六年の通常国会に法案を提出し、〇八年度からの実施をめざしています。
いまの老人保健制度は、お年寄りの医療費を別会計とし、財源を健康保険や国保など各医療保険からの拠出金と、国・地方の公費負担でまかなっています。
新しい高齢者医療制度は、お年寄りにかかる医療費を抑えるのがねらいです。政府は昨年三月に医療制度「改革」の基本方針を閣議決定。厚労省はこの方針に沿って論点案をつくり、医療保険部会に提示しています。七月に論点をまとめ、具体案づくりに入る予定です。
新しい制度では、給付費の五割を公費、残りをお年寄りの保険料と、現役世代の負担(連帯保険料)でまかなうことが決まっています。具体的に保険料負担をどうするかは、今後検討されます。
新しいしくみは、介護保険のようにすべてのお年寄りから保険料を徴収するのが特徴です。論点案は、六十五歳以上の全員に負担を求めています。現在は、家族に扶養されて保険料負担のない約三百六十万人のお年寄りが、新たに保険料を負担することになります。
厚労省は、高齢者には年金収入があり「現役世代と比べて経済的にそん色のない負担能力をもっている」などとして、「現役世代との均衡を考慮した」保険料負担を求める考えを示しています。
新しい保険制度の運営については、「地域で担うことが適当」としています。具体的には明記していませんが、都道府県や市町村の広域連合が候補になる見通しです。介護保険のように運営者がそれぞれの財政に責任をもち、地域の医療費が上がればお年寄りの保険料も高くなるしくみの導入を打ち出しています。しかし、市町村や都道府県は、財政負担増が予想されるためこれに反発しています。