2004年7月21日(水)「しんぶん赤旗」
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年金保険料の無駄遣いを続けてきた社会保険庁に国民の批判が集中するなか、小泉内閣は、同庁長官に民間人を起用するなど、「改革」をアピールしています。これで本当の改革ができるのでしょうか。いま求められていることは――。山岸嘉昭記者
これまで国民から集めた年金保険料のうち、五兆六千億円もの巨額が、年金給付以外に使われていた――社会保険庁改革をめぐって、国民の最大の関心事は、この問題をどうするのかです。
無駄遣いの象徴として有名なのは、年金資金運用基金(旧年金福祉事業団)によって全国十三カ所で建設された大規模年金保養基地「グリーンピア」。日本共産党の小池晃政策委員長の追及で、そのうち七カ所が歴代厚相の地元だったことが判明しました。赤字経営で次々に破たんし、建設費や維持管理費など約四千億円が無駄になっています。
社会保険庁長官の香典代や公用車の購入費、運転手の人件費、自動車重量税、職員の健康診断費用や宿舎の建設費、維持管理費などにまで、保険料が流用されていたことも明らかになりました(表)。これは、一九九八年施行の「財政構造改革特別措置法」(財革法)によって、保険料を社会保険庁の「事務費」に使うことを認めたうえに、社保庁がこれを悪用したことから起こったものです。
小泉内閣は、グリーンピアの廃止を打ち出しましたが、小泉純一郎首相をはじめとした歴代厚相の責任は、不問のままです。
財革法については、〇三年度で期限が切れるはずだったのが、小泉内閣は特例公債法でこれを継続し、〇四年度も「事務費」を保険料でまかなう予算を組みました。
小泉首相は、参院選中の六日、社保庁長官に損害保険ジャパン副社長の村瀬清司氏起用を打ち出しました。
しかし、民間人を起用して、組織の見直しや予算執行の「透明化」に取り組むといっても、保険料流用の仕組みに手をつけなければ、「看板」を架け替えただけになります。
保険料を給付以外に使いながら、ないがしろにされているのが、国民へのサービスです。
年金改悪法の国会審議、強行で高まった年金への関心を背景に、各地の社会保険事務所には年金への相談が殺到しています。自分の年金情報を知りたくても、半日以上待たされることも、ざらです。
一方、厚生労働省は国民年金保険料の「未納対策」として、今年一月に未納者五百人に対して督促状を出したうえ、十件の財産差し押さえまで実施しました。
年金改悪法では、強制徴収に向けての措置をさらに強める内容が盛り込まれています。
年金をどれだけ受け取れるかは十分に知らされず、保険料だけは強制徴収をちらつかせて容赦なく徴収する――これでは国民の年金不信をますます拡大するばかりです。
日本共産党は、年金保険料を給付以外の目的に利用することをきっぱり廃止するよう求めています。
二百兆円を超える年金積立金(保険料を将来の給付に回すため積み立てたもの)については、ハコモノづくりや株式投資に回すのをやめさせ、計画的に取り崩して、給付にあてるよう主張しています。
社会保険事務所で長時間待たされるような事態の改善も急務です。
スウェーデンでは年に一回「オレンジ・レター」を届けて、どれぐらいの年金を受け取れるのかを知らせています。イギリスでは、前もって予約した住民の98%は、約束の時間どおりの対応を受けています。
諸外国の例に学び、劣悪な年金情報サービスを抜本的に改めることこそ、国民が求めている改革の方向です。
厚生労働省の外局として置かれ、政府管掌健康保険や厚生年金保険、国民年金の各事業を運営。年金業務を担う中心として社会保険業務センターがあり、各都道府県に地方社会保険事務局(47カ所)、出先機関として社会保険事務所(312カ所)が置かれている。