日本共産党

2004年7月21日(水)「しんぶん赤旗」

世論が政府動かした

フィリピン軍のイラク撤兵

“反戦”“出稼ぎ者の生命守れ”


 フィリピン政府は十九日、イラクで武装勢力に拘束されたフィリピン人労働者の生命を救うためイラク派兵部隊を撤退させました。当初、人質を取ったイラクの武装勢力からの撤兵要求を拒否したアロヨ政権が一転、全面撤退に応じた背景には反戦と国民の安全優先を求める強い世論と運動がありました。

 拘束されたアンヘロ・デラクルスさん(46)は、アロヨ大統領の地元でもあるマニラ近郊パンパンガ州で八人の子を持ちながら失業中でしたが、目にけがをした子どもの治療費を稼ぐためイラクで働いていました。

 今月七日、デラクルスさん拘束が明らかになった直後から、フィリピンのテレビやラジオ、新聞では連日、デラクルスさんの妻が夫の解放とそのためにも「イラクから撤兵してほしい」と訴える姿が報じられました。

 彼女の訴えは、人口の一割近い七百万人が海外で出稼ぎ労働に従事しているフィリピン社会を揺さぶりました。社会保障制度が極めて貧弱で、老後の生活を海外で働く子どもや親せきからの仕送りに頼る人も少なくありません。出稼ぎ者からの総額七十六億ドル(約八千四百三十六億円)に達する送金は、国内総生産の10%を占めています。

 人質の解放と撤兵をよびかける行動も連日、各地で繰り広げられ、短期間で急速に盛り上がりました。この運動では、イラク戦争反対やかつての米軍基地撤去のたたかいで中心になってきた反核・民主勢力がけん引役を果たしました。

 こうしたなかで、米国との「同盟関係」を重視して、初めは即時撤兵に消極的だった与野党の国会議員からも、撤兵要求が出てきました。米国やオーストラリアが今回のフィリピン政府のイラク撤兵を厳しく批判しているなかで、今後、アロヨ政権がイラク問題や世界の平和秩序確立の課題、対米関係などでどのような外交政策をとるか注目されます。

 宮崎清明記者


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