2004年7月22日(木)「しんぶん赤旗」
イラクで武装勢力に二週間拘束された後、二十日午前に無事解放されたフィリピン人のアンヘロ・デラクルスさん。解放条件だった軍撤退を決断したアロヨ大統領は、米国からの脅しを退けての決断に「悔いはない」と語り、多くのフィリピン国民の歓迎を受けています。
デラクルスさん解放の一報を受けてアロヨ大統領は国民向けのテレビ演説を行い、「八人の子どもの父親であるアンヘロさんは、ごく普通の、希望と機会を求めて海外で汗水流して働くフィリピン人の象徴となった」「中東に百万人、世界中に八百万人以上の海外労働者を抱え、わが政府はいかなる場所であれ彼らが住み、働くところでの幸福に深い国益を感じている」「危機にある同胞の生命を救うために部隊撤退を決断した。後悔はない」と語りました。
ロイター通信は、マニラ北方九十キロにあるデラクルスさんの地元パンパンガ州ブエナビスタ村で、アロヨ大統領の演説をテレビで聞いた親族たちの様子を伝えました。
「アンヘロの命を救ってくれたグロリア(アロヨ大統領)と神に感謝します」と妹のネリアさん。他の親族たちも歓喜の涙。ビールやごちそうで解放を祝いました。
フィリピンの主要同盟国である米国、オーストラリアやイラク暫定政府はアロヨ大統領の決断をテロへの屈服だとして批判しました。
一方、フィリピンのサン・スター紙は社説で次のように述べています。「米・豪や他のいくつかの国は、撤退の決断でフィリピンが世界の敵になったと叫ぶ。しかし、大多数の国がどう感じるかも重要だ。フィリピンがイラクに行ったのは、アロヨ大統領が有志連合に加わったからだが、この連合自体が世界の多数派を形成していないことを考えるべきだ。世界から孤立しているグループがあるとすれば、それは連合のほうだ。アロヨ政権は、撤退の判断をすることで、過去の誤った外交政策を正していると言えなくもない」
山田芳進記者