日本共産党

2004年7月24日(土)「しんぶん赤旗」

“日米同盟のため9条なくせ”

アーミテージ発言


 「憲法九条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」。アーミテージ米国務副長官が二十一日、自民党・中川秀直国対委員長との会談でこう強調しました。“米国発改憲要求”を改めて示した、そのねらいと背景は――。  田中一郎記者


「改憲は米国発」証明

 同氏は、日本の政府・与党に強い影響力を持ってきた人物です。政権入りをする前から、憲法九条を、自衛隊を海外での米国の戦争に動員するうえでの障害ととらえ、その突破を強く求めてきました。

 その源流といえるのが、二〇〇〇年十月に同氏が中心になってまとめたアーミテージ・リポート(米国防大学国家戦略研究所特別報告)です。

 米国がアジア太平洋地域でおこす戦争を日本が支援することを定めた日米軍事協力の指針(ガイドライン、一九九七年)について、「日米同盟における日本の拡大された役割の基礎」とし、「上限と認識されるべきではない」と、いっそうの軍事協力の拡大を要求。日米間のあるべき姿として、のちにイラク戦争に乗り出すことになる米英同盟を「日米同盟のモデル」と打ち出しました。

 そのうえで「日本が集団的自衛を禁止していることが、(日米)同盟協力の制約になっている」として憲法を敵視したのです。

 集団的自衛権は、自国が攻撃を受けていなくても、同盟国が攻撃を受ければ、武力行使できるとするもの。しかし、実態は、米国のベトナム戦争や旧ソ連のアフガニスタン侵攻など、侵略戦争の口実にされてきたものです。先制攻撃戦略を公然と掲げる米国に武力行使をもって支援をすることは、集団的「自衛」どころか、集団的「侵略」を意味します。

 ガイドラインにもとづく周辺事態法の成立後、小泉・自公政権が強行したテロ特措法にもイラク特措法にも、「海外で武力行使はしない」「非戦闘地域で活動する」という制約がありました。憲法九条が海外での武力行使を禁止しているからです。

 この「制約」を改憲で正面から打ち破ろうというのが、アーミテージ氏ら米国の強い要求の狙いです。

「07年度改憲」後押し

 アーミテージ氏がなぜ今、この時期に再び改憲を日本に突きつけたのか。同氏の狙いどおりに、日本で、海外派兵の地球規模での拡大と改憲を狙う動きが強まったことが背景にあります。

 小泉・自公政権は、インド洋やイラクへの自衛隊部隊の展開を次々に強行しました。

 「(アーミテージ・リポートで)展望したことの多くが現実となった」。同氏は今年二月、日本での講演で絶賛しました。

 さらに自民党が二〇〇五年までに独自の憲法改定案をとりまとめることを打ち出したのをきっかけに、民主、公明も改憲を競い合っています。衆院の中山太郎憲法調査会会長は「二〇〇七年度には、憲法改正を実現する」とのべるなど、現実の日程にのぼっています。

 今回の参院選では、自民・公明・民主の各党といった改憲派勢力がいっそう拡大し、多数を占めるまでになりました。

 二十一日の中川国対委員長との会談は、アーミテージ氏が、こうした動きに満足を示し、改憲に向けた動きのいっそうの加速を露骨に求める場となったのです。

 その満足ぶりは、同氏の「十年前でさえ、今のような(憲法改定)論議は無理だった。五年前でも、ささやかなければならなかった」という言葉ににじみでています。

 「時間が少ないので、憲法改正の話はあまりできないかもしれないが…」と及び腰だった中川氏に対し、アーミテージ氏は「いや、どんどんやろう」と、憲法改定に強い関心を示し、冒頭の改憲発言が飛び出したのです。

 自民・公明・民主の各党の間で強まる改憲の動きは、「日米同盟」のために憲法まで米国にささげようとするものです。このことを同氏の発言は浮き彫りにしています。


語録

●米国防大学国家戦略研究所(INSS)特別報告「米国と日本 成熟したパートナーシップに向けての前進」(いわゆるアーミテージ報告、2000年10月11日)

 「集団的自衛を日本が禁止していることは、(日米)同盟協力の制約になっている。この禁止を取り払えば、より緊密で、効果的な安全保障協力が可能になる。これは日本国民だけができる決定である。…しかし、米政府は、より大きな貢献をし、より対等なパートナーになろうとする日本を歓迎することを明確にしなければならない。われわれは、米国と英国との特別な関係を日米同盟のモデルと見なす」

●日本記者クラブでの講演(2004年2月2日)

 「ナイ博士と私が三年前にまとめた報告(注・アーミテージ報告)で、私たちは日本の(集団的自衛権行使に関する)憲法上の禁止について、いくらか強いコメントをした。私たちは、それが多かれ少なかれ(日米)同盟協力の妨げになっていると書いた。…日本が憲法を変えるのか、九条の解釈を変えるのかは、非常に健全な議論だと思う。…そのことについて政治家に議論させるべきだ」

●『文芸春秋』(2004年3月号)のインタビュー

 「私は二〇〇〇年に『アーミテージ・リポート』という二十一世紀の日本の安全保障のあり方を記した報告書を発表しました。…そこで憲法九条が(日米同盟や国際社会の安定のために軍事力を用いる点で)邪魔になっている事実を挙げました。連合軍が共同作戦をとる段階で、ひっかからざるを得ないということです。それが偽らざる所懐(注・心に思うこと)です」


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