2004年7月29日(木)「しんぶん赤旗」
厚生労働省の国民年金特別対策本部は二十八日、自営業者らが加入する国民年金保険料の二○○三年度の納付実績をまとめました。
それによると、納付率は63・4%と、過去最悪だった前年度(62・8%)から0・6ポイント改善しました。
納付実績が改善されたといってもわずかで、未納率は36・4%と40%近い深刻な状況は変わりません。未納率の上昇は先の年金改悪法の審議でも大きな問題となり、社会保険庁は地域組織に納付協力を要請するなど対策を強化する方針です。同庁は納付率が上昇した原因として、(1)前年度は納付対象だったが、免除申請の励行などで○三年度は納付する必要がなくなった人が増えた(2)転職者など、この二年間に一回以上資格喪失・再取得した人の納付率が改善した―などを挙げています。
一方で、○三年度末の国民年金の被保険者数は、景気低迷による離職者増などで、前年度末比三万人増の二千二百四十万人となりました。リストラによる離職などによって厚生年金から国民年金への移行が増えているもので、未納増加の原因ともなり、年金制度の財政基盤を弱体化させるものです。
二〇〇二年度に初めて60%台に落ちこみ、年金「空洞化」の象徴となっている国民年金保険料の納付率。0・6ポイント上がったとはいえ、三人に一人が保険料を払っていない実態は何ら変わりません。厚生労働省は、これを二〇〇七年度までに80%に引き上げるという前提で年金改悪法を強行しました。
しかしほとんど改善のない今回の納付状況は、80%への引き上げに根拠がなく、過去最悪となった先の出生率(1・29)とともに改悪法の前提がくずれていることを示したものです。
納付率の低下を招いている原因は、高すぎる保険料と年金への信頼低下です。
ところが、自民・公明の小泉内閣が強行した年金改悪法により、国民年金保険料は〇五年四月から引き上げられます。これが、経済的理由で保険料が支払えない人をさらに増やすことは疑いありません。
年金への信頼をめぐっても、閣僚、国会議員の未納問題や、年金改悪法をめぐり「保険料は上限固定」「給付は現役世代の50%を確保」と国民にうそをついたことで、信頼は地に落ちています。
みずから、保険料納付率を悪化させる施策を行いながら「収納対策」を「強化」しても、根本的解決につながらないことは明らかです。厚労省が昨年八月に「国民年金特別対策本部」を発足させ、納付率向上のキャンペーンや未納者への財産差し押さえという「脅し」までかけながら、ほとんど納付率が上がらなかったことは、小手先の「対策」の効果がないことの証明です。
山岸嘉昭記者