日本共産党

2004年8月1日(日)「しんぶん赤旗」

歯止めどころか派兵の「拡大」へ

岡田発言、自民との違い強調するが


 民主党の岡田克也代表が訪米中、「憲法を改正して国連安保理の明確な決議がある場合に、日本の海外における武力行使を可能に」すべきだと発言したことは、改憲策動の発火点である米国で野党党首として初めて九条改憲の方針に踏み込んだ点で非常に重大な動きです。

米の無法行為支えることに

 マスメディアのなかには、岡田氏が「日本には集団的自衛権の行使を広く認め、自衛隊が米軍と共同した軍事力行使を世界中で行なえるようにすべきとの意見もあるが私は反対」だとのべたことをもって、「国連という枠を設け、(自衛隊の)派遣拡大に歯止めをかける『対案』を示そうとする」ものだと評価する議論もあります(「朝日」七月三十日付)。

 これは小泉政権が、ブッシュ米政権の無法なイラク戦争を支持し、なし崩しに自衛隊のイラク派兵・多国籍軍参加をすすめたこととの対比で、民主党の姿勢を評価しようという立場です。

 しかし、「国連決議」という看板さえあれば、海外での武力行使を可能にするという岡田氏の議論は果たして米国追随の自衛隊海外派兵の歯止めになりうるのでしょうか。

 まず指摘しなければならないのは、国連決議のもとであれ公然と海外での武力行使を認めることで自衛隊(軍隊)の派兵が拡大されるということです。

 外務省のまとめによると、一九九一年の湾岸戦争以降、国連決議のもとでの多国籍軍は十六回に及びます。その中には一九九九年のNATO(北大西洋条約機構)軍によるユーゴ空爆や、一九九二年のソマリアでの「平和執行部隊」による強制活動などが含まれています。

 日本はこれまで憲法九条との関係からこうした武力行使を伴う軍事活動には参加してきませんでした。しかし、岡田氏の議論は、今後湾岸戦争型の多国籍軍を含め、日本が参加し武力行使することを可能にするというのです。

 今年六月のイラク多国籍軍も国連決議にもとづいて設置されています。民主党はこの多国籍軍からの自衛隊撤退を求めていますが、岡田氏はこの多国籍軍にも改憲をして参加しようというのでしょうか。それは、イラク住民の虐殺を含む「掃討作戦」への参加など、米英の無法な占領を武力行使で支えることになります。

 「国連決議のもとでの武力行使」を認めることは、海外派兵の歯止めとなるどころか、派兵拡大へとつながるのです。

集団的自衛権含んだ報告も

 さらに、岡田氏は集団的自衛権の行使について、「広く認めることには反対」といっていますが、全く認めないとは明確に語っていません。

 民主党憲法調査会が参院選直前に発表した改憲論議の「中間報告」では、国連の集団安全保障活動への積極参加とともに、「自衛権」を明記する方向を盛り込みました。この自衛権には、「個別的自衛権と集団的自衛権の両方を含む」(同調査会、安保・国際小委員会関係者)とされています。

 集団的自衛権の“メリット”は、その国の判断次第で自由に武力行使できることにあります。民主党が集団的自衛権行使の道を完全に排除していないのは、結局国連決議も得られない米国の単独行動に追随する余地を残すものといわざるを得ません。

 この点でも民主党の改憲論は自民党のそれと実際には大差のないものです。にもかかわらず「違い」をことさら強調する岡田氏の発言や、マスメディアの議論は、アメリカの要求する改憲を競い合って促進するという「二大政党」制の危険な役割を示しています。

 中祖 寅一記者


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