2004年8月2日(月)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】イラク暫定政府のアラウィ首相は、七月十九日から周辺アラブ諸国を歴訪し、各国でイラクへの派兵を要請しましたが、アラブ諸国指導部からは、米主導の多国籍軍が存在する限り、派兵はできないとの声が相次いでいます。
ヨルダン、エジプト、シリア、サウジアラビアなど主要国を訪問したアラウィ首相は二十九日には、同時期にアラブを訪問したパウエル米国務長官とサウジアラビアで会談した後、「イラクにはわれわれに敵対する邪悪な勢力がいる」「私はイスラムとアラブ諸国の指導者に対し、共同のたたかいに参加するよう訴える」とのべました。パウエル長官も、イラクが「主権国家」になったことなどを理由に派兵への期待を表明しました。
この動きのなか、アラブ連盟(二十一カ国とパレスチナ自治政府が加盟)のムーサ事務局長は三十日、訪問先のチュニスで会見。アラブ諸国によるイラク派兵には「占領」の終了が必要であると指摘したうえで、「国連の指揮下に入る場合以外は、いかなるアラブの軍隊もイラクで活動することはない」と指摘し、米軍主導の多国籍軍への参加はありえないとの立場を改めて表明しました。
また、イラク政府の要請があれば派兵もありえるとしていたヨルダン政府も、ハデル国務相が同国のアッライ紙三十日付で、「将来、国連の活動を保護するための国際軍が結成された場合でも、ヨルダンがこれに参加することはまったくもってありそうもない」と強調しました。
同じくこれまでイラク派兵の可能性に言及してきたイエメンのキルビ外相はヨルダン紙アッドストール三十一日付で、「占領軍がいまだ存在するこの時期にアラブの軍隊を送ることは、治安の安定のためではなく、占領軍を守るためということになる」とのべ、「正当性」のない派兵には応じられないとの立場を示しました。
アラウィ首相から個別に派兵を要請されたエジプトは、ゲイト外相が二十三日、「エジプト部隊の派兵はありえない」と明言しています。
一方、サウジアラビアは二十八日、同国のサウド外相がパウエル国務長官と会談した際にイスラム諸国軍の派兵構想を示しました。詳細は明らかになっていませんが、サウジ外交筋によれば、多国籍軍の一員としての派兵を望む米側にたいし、サウジ側は別部隊の案を示したとされます。