日本共産党

2004年8月10日(火)「しんぶん赤旗」

経済・財界気流

増税へ 改憲へ 米政権と示し合わせたように

「絶好のチャンス」と圧力強める


 参院選挙の直後から消費税増税、憲法改定にむけた動きが加速しています。財界側も、衆院が解散されなければ次の参院選まで国政選挙がないこの時期が、「黄金の三年間だ」として政治への圧力を強めています。


グラフ

  財界首脳はこの時期、「諸課題処理の絶好のチャンス」とみている。問題は二つだ。一つは消費税増税を含む社会保障「改革」。二つ目は、憲法問題。そして武器輸出の解禁および宇宙の軍事利用がからんでくる。

首相の任期中に「あり得る」と

  消費税増税問題では、細田博之官房長官が七月二十九日の記者会見で小泉首相の任期中にも「(引き上げ方針を決めることは)あり得る」と発言した。いよいよきたな、と思ったね。

  どういうこと。

  二〇〇七年度までに消費税を10%に引き上げることを求めている日本経団連は、〇六年春には、増税法案を成立させたいと狙っている。細田官房長官の発言は、日本経団連が描くシナリオとぴたり一致するんだよ。

  消費税増税を含めた議論をするために設置した「社会保障の在り方に関する懇談会」(細田官房長官の私的懇談会)には、日本経団連の西室泰三副会長(東芝会長)が入り、にらみをきかせている。

「改憲論者」発言どんどん過激に

  もうひとつの課題の憲法問題。日本経団連は、改憲へ向け「国の基本問題検討委員会」を発足させたが、その初会合で奥田碩会長(トヨタ自動車会長)は「(参院選後の)政治的にも安定したこの時期が、国の基本問題を検討する好機」と強調してみせた。

  七月下旬に開いた恒例の夏季セミナー後の会見では、奥田会長は「(自分を)改憲論者と思ってもらっていい」といった。

  その奥田会長、今年四月の会見では「(憲法問題は)私としてはいいにくい」と明言を避けていたが。

  奥田会長の発言は、どんどん過激になっている。アーミテージ米国務副長官が参院選挙後、憲法九条を「日米同盟の妨げ」と発言した。この発言にも、奥田会長は「九条は外国人にも分かりにくいのではないか」などといって、理解を示した。

  まるでブッシュ政権と示し合わせたようだね。

  もともと、改憲論はアメリカ発だし、奥田経団連が見直しを求めている武器禁輸問題や宇宙の平和利用原則も、実は、アメリカから発信されてきたものだ。

  日米の軍事企業が参加している「日米安全保障産業フォーラム」(一九九七年に発足)が出した共同宣言(〇二年十二月)では「武器輸出三原則によって防衛装備・技術協力の推進が大きく妨げられている」と見直しを求めた。

  技術交流を目的として九〇年に設置されたのが日米の「技術フォーラム」。毎年会合を開いているが、〇三年の会合では、米国のシンクタンク(調査研究機関)側が「日本が武器輸出三原則を堅持し続ければ、国際共同プログラムが成り立たなくなる」と強調していた。

  今年七月に日本経団連が発表した提言では、武器禁輸原則が障害となって「先進国間の共同開発プロジェクトの流れから取り残されて(いる)」と同じようなことをいっていたよ。

  宇宙の平和利用原則については、軍事戦略に強いアメリカのシンクタンク(CSIS=国際戦略研究所)が一年前に日米安保の障害になっているとして見直しを求める提言を出している。

宇宙軍事利用へ日米軍事産業が

  日本経団連が、初めて、宇宙の軍事利用に道を開くよう提言したのは今年の六月のことだった。日米安保のもとで情報・通信も含めた日米軍事産業の関係が深まっていることが背景にあるのだろう。

  憲法九条が改悪されたら、アメリカのように軍事と産業が一体となった軍産複合体ができ、それが権力の中枢を占めてしまう危険があるね。

  戦後、日本の企業は、九条があったから日本帝国主義が侵略をしたアジア諸国でも資本進出ができた。日本経済は、九条とともに復興し発展をとげてきたんだ。

  日本経団連の奥田会長が「軍事力がなければ外交力がない」などというのは時代錯誤もはなはだしい。財界人やエコノミストの中にも、九条は日本経済の宝だと思っている人は数多くいる。

  軍事がなによりも優先される事態になれば経済活動は統制され、市場メカニズムをゆがめてしまう。資本主義を信奉している人たちからみても、それは許せないはずだね。

  奥田経団連が「黄金の三年間だ」というのなら、こちらにとっても世の中を変えるたたかいの三年間だ。政治の「あつい季節」は夏だけじゃないね。


日米安全保障産業フォーラム委員企業

<日本側>

 三菱重工業

 石川島播磨重工業

 川崎重工業

 島津製作所

 東芝

 アイ・エイチ・アイ・エアロスペース

 小松製作所

 ダイキン工業

 日本電気

 日立製作所

 富士通

 三菱電機

<アメリカ側>

 ボーイング社

 エアロジェット社

 ジェネラルエレクトリック社

 ロッキード・マーチン社

 ノースロップ・グラマン社

 レイセオン社

 サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル社

 ユナイテッド・ディフェンス社



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