日本共産党

2004年8月11日(水)「しんぶん赤旗」

米軍に宗派超え非難

住民に退去命令、全面攻撃の懸念

イラク・ナジャフ緊迫


 【カイロ=小泉大介】イラクで米軍主導の多国籍軍とイスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師支持民兵の戦闘が激化の一途をたどるなか、米軍は十日、中南部のシーア派聖地ナジャフの住民に対し、戦闘が続いている地域から直ちに退去するよう呼びかけました。このため米軍が近く全面攻撃を仕掛けるとの見方が強まっています。

 イラク国内では、連日激しい攻撃を繰り返す米軍を非難する声が広がり、今後の政治過程への重大な影響も懸念される状況となっています。

 現地からの報道によると、今月五日に始まった米軍によるナジャフへの攻撃は十日も継続。米軍は武装ヘリや戦闘機を動員し、民兵が隠れているとする共同墓地などを攻撃しました。米軍は九日、五日以降、三百六十人の民兵を殺害したと発表しています。

 米軍戦車部隊は九日までに、住民にとって最も神聖なナジャフ中心部のアリ廟(びょう)まで数百メートルの地点まで展開。サドル師は同日、ナジャフで米軍に徹底抗戦する姿勢を表明しました。

 九日には、首都バグダッド北東部のサドルシティーでも、暫定政府が夜間外出禁止令を敷くなか、米軍と民兵との戦闘が発生。南部バスラでは英軍と民兵との戦闘で英兵一人が死亡しました。

 こうした事態を受け、イラクでは九日までに、宗派を超えた組織、個人が米軍の軍事作戦を非難する声をあげています。

 イスラム教スンニ派有力組織のイスラム聖職者協会は声明で、サドル師支持民兵への攻撃は、広範な国民の支持を集めているサドル師という「イラクの象徴」への攻撃だと指摘。国連安保理など国際組織に対し、事態収拾に動くよう要請しました。

 四十以上のシーア派政党・政治組織によって今年五月に結成された「シーア政治評議会」も声明で、「占領軍によるサドル師支持民兵への攻撃はイラク国民への攻撃」と指摘。問題が平和的に解決されない場合は、今月十五日に開催が予定される国民大会議をボイコットすると表明しました。

 イラクの政治評論家、アブド・アルナース氏は九日、カタールの衛星テレビ・アルジャジーラに対し、「強大な軍事力を持つ米占領軍の誤った政策により、イラク人は悲劇に見舞われている」「イラク国民へのこの軍事力行使は、どんなことがあっても正当化されない。それはいっそうの暴力を招くだけだ」と非難しました。



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