2004年8月12日(木)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】米軍主導の多国籍軍がイスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師支持民兵にたいし全面攻撃に出る危険が高まる中、イラク暫定政府のジャファリ副大統領は、攻撃の焦点となっている中南部のシーア派聖地ナジャフから米軍が撤退するよう求めました。カタールの衛星テレビ・アルジャジーラが十一日に放映したもの。
ジャファリ副大統領は同テレビで、「私は多国籍軍がナジャフから撤退し、イラク治安部隊だけがとどまることを要求する」とのべました。
暫定政府のアラウィ首相は八日、米軍に抵抗するサドル師支持民兵にたいし、ナジャフから即時撤退するよう求め、米軍と一体の立場を鮮明にしていました。米軍は十一日も七日間連続となるナジャフ攻撃を継続。十日には市内を巡回し、住民に退去するよう求めるなど、聖地にたいする全面攻撃も辞さない構えを見せています。
一方、サドル師は「撤退すべきは米軍だ」とのべ、十一日にも声明で「私が捕らわれたり殉教者になったとしてもたたかいをやめるな」と支持者に訴えました。米軍の責任を追及する声はシーア派勢力だけでなく、イスラム聖職者協会などスンニ派勢力の間からもあがっています。
今回の副大統領の発言は、こうしたイラク国民の反米の声の高まりを反映し、暫定政府内部で、軍事作戦をめぐって矛盾が生じていることを浮き彫りにしました。
現地からの報道によると、ナジャフでは十日、米軍が武装ヘリからミサイルを発射し、市中心部の共同墓地周辺を爆撃しました。砲撃音は住民にとって最も神聖なアリ廟(びょう)近くでも聞かれたもようです。
米軍主導の多国籍軍の軍事作戦、民兵との戦闘はイラク各地でも激しさを増しています。イラク保健省報道官は十一日、首都バグダッドや近郊のクート、南部アマラ、バスラなどの各都市で十日から十一日にかけイラク人少なくとも三十人が死亡、二百十九人が負傷したと発表。報道官は、犠牲者のほとんどが一般市民のようだとのべました。同省は、ナジャフの犠牲者に関しては、戦闘の激しさのため把握できないとしています。