2004年8月17日(火)「しんぶん赤旗」
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「ばかやろー!」
米兵が沖縄国際大学構内に植わる大きなアカギの木を切り倒した瞬間でした。女性が大きな声で叫び、事故現場で作業する米兵たちをキッとにらみつけました。
米軍ヘリコプターが沖縄県宜野湾市にある沖国大の構内に墜落した事故から三日目の十六日。朝から機体の残がいを撤去するため、周辺の樹木が伐採されました。事故現場からときおり吹いてくる風は、ゴムの焼けたようなにおいがまだ残り、切られた木々のかおりも感じられました。
アカギは、沖縄で並木などで親しまれている高木。その一本にロープを巻きつけ、三人が引っ張り、一人が根元をチェーンソーで切りつけ、二人が木を押し倒す。この光景にたまらず叫んだ近くに住む浦崎聖子さん(57)=西原町=。四十年、沖縄に暮らしています。「米軍は沖縄の大事なものをずっと壊し続けてきた。人間も島の財産も沖縄戦のときからずっとですよ」
大学は約三十年前、木が一本も生えていないところから始まったといいます。「樹木は大学と一緒に育ってきたのに、それを米軍は切ってしまった。あの切られたアカギは、この辺では大きい木でした。米軍は私たちの歴史をいつも根こそぎ切っていく」。伐採されていく木々をじっと見ながら話します。アカギの木は沖縄戦のときに焼き払われました。
今回の事故で「死者が出るような大惨事に至らなかった」という声が聞かれます。浦崎さんはいいます。「人の命の代わりに木の命を絶たれた。事故機の残がい回収のために、木を殺すなんて許されるわけないでしょ?」。記者に訴えかけてきました。目には涙が浮かんでいます。
「これじゃイラクでやっていることと変わらない。事故現場を米軍に仕切られて、まるで戦場だよ。悪いことしてるのは米軍。でもそれを許してる日本政府はもっと悪い」と憤ります。
最後まで傷ついたアカギの木を惜しむ浦崎さんはいいました。「お巡りさん、(米軍から)切り株もらってよ。アカギの切り株ぐらいもらってよ」
本吉真希記者