2004年8月18日(水)「しんぶん赤旗」
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介護保険の見直し論議が厚生労働省内ですすみ、来年の通常国会への法案提出に向けて秋には厚労省案が出されます。見直しで何が議論されなければならないのか、政府の論点にどんな問題があるのか。日本共産党の小池晃政策委員長・参院議員が語ります。聞き手 江刺尚子記者・斉藤亜津紫記者
家族による介護から「社会全体で要介護者の介護を支える新たな仕組みを創設するため」(小泉純一郎厚相、当時)とつくられたのが介護保険です。二〇〇〇年四月にスタートしました。
高齢者介護に対する国の責任を「社会」におきかえることで、財政面を含めて国の関与が大幅に後退しました。同時に家族介護から社会的介護への流れをすすめるものでもありました。その「理念」に照らし実態はどうなっているでしょうか。
当初から問題になったのは基盤整備の遅れでした。日本共産党は「保険あって介護なし」になると指摘してきました。四年余を振り返って、やはりそういう実態がいまだに続いているのではないでしょうか。
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また、介護にたいする国の財政負担を、それまでの老人福祉制度の半分に減らしたために国民に高い保険料、利用料負担が押しつけられました。
その結果、介護サービスの利用率が低いままの状態が続いています。
実際に利用されている介護サービスは、当初から支給限度額(保険から給付されるサービス費用の上限額。上限を超えると全額自己負担)にたいして四割程度でしたが、一番最近の今年五月の審査分でもおおむね四割です。要介護度の高いところのサービス利用は少しあがって五割近くになってきていますが、全体としては四割程度にとどまっている。利用しようと思っても、費用の一割が自己負担(利用料)となるから、上限の半分以下しか利用していないという事態が続いています。
要介護認定を受けながら利用しないという人もずいぶんいます。認定を受けた人は、二〇〇二年度末で全国に三百三十二万人いますが、サービス利用者は二百五十四万人ですから、約八十万人が認定を受けながら介護サービスを使っていない。
介護保険が始まったときにも利用者の数が予測を七十万人下回ったことを国会で追及したのですが、政府は「いずれこれは減っていく」と答弁しました。しかし依然として八十万人ほどが利用しないという構造は変わっていないのです。
なぜこんなことになるのか。山梨民医連の甲府共立病院の在宅介護支援室が、介護保険利用者の実態を調査しました。甲府市内の利用者の一割を対象とするかなり大規模な調査です。それによると、介護保険を利用している人の年金額は、月額五万円未満が43%、世帯収入で見ても年間百五十万円未満が25%で四人に一人という実態でした。やはりこれでは利用料を払って介護を受けることができません。
全国市長会の意見書(四月十四日)でもこういっています。「国が実施している低所得者対策は保険料および利用料を軽減するのに十分でないことから、国の制度として財政措置を含めて総合的かつ統一的な対策を講じるよう抜本的な見直しをおこなうこと」
介護保険が始まるときから一貫して「国の責任で低所得者対策をせよ」ということをわが党も要求してきたし、自治体も声を上げてきたのです。この問題の解決なくして見直しとはいえません。
ところが政府の姿勢は、低所得者対策で使いやすい制度にする方向とはまったくあべこべです。国の負担を低くおさえるために介護保険の利用をできるだけ抑制するための手段をあれこれと打ち出しています。(つづく)