日本共産党

2004年8月20日(金)「しんぶん赤旗」

どうみる介護保険見直し

小池政策委員長が語る(3)

軽度サービス削減を検討


 在宅サービスの見直しで、社会保障審議会介護保険部会の報告書(七月三十日)は、介護を必要とする状態になることを防止する「介護予防」の重視を打ち出し、軽度の要介護者は介護給付でなく「新・予防給付」に切り替えるとしています。

「介護の予防」を政府が壊した

図

 予防自体は悪いことではありません。高齢者の健康を守り、生きがいを持って安心の老後をおくれるようにするため国や自治体が老人福祉事業として介護予防に力を入れるのは当然の責務です。これまで、その責任を放棄して、医療費の負担増によってお年寄りに病気が悪化するまで病院へいくことを我慢させ、医療・介護の予防の役割をめちゃくちゃに破壊してきたのは政府のほうです。

 厚生労働省は、軽度の要介護者(「要支援」「要介護1」の二ランク)について、介護保険制度が始まってからも状態が改善しない、要介護度が悪化しているからサービスに意味がなかったようにいっています。

 しかし年をとるにつれて要介護度が進行するのは、避けがたい面があります。どういう人が悪化したのか、その原因は何かを分析すべきですが、全くおこなわれていません。いきなり「介護給付の対象からはずす」というのは短兵急(たんぺいきゅう=だしぬけなこと)すぎます。

 対象からはずす結果どういう事態になるのか。

 在宅で暮らしていくための支援として車イスやベッドなどの福祉用具のレンタル(貸与)とか、週に一回外に出て通所介護に参加してみんなと交流をもつことで「引きこもり」を防ぐとか、週に一回か二回ヘルパーさんが来て、家事の手伝いをするといった大事なサービスが、奪われてしまいかねません。

 こうした軽度の要介護者が少しでも暮らしやすくなるように援助する、こういう点が介護保険で利用が広がった一番の部分だし、現実に大きな役割を果たしているんですね。介護保険制度をつくって、非常に貧弱だった人たちへのサービスが従来より広がったら今度はつぶす。とてもまともな見直しとはいえません。

 大阪府医師会の酒井國男会長も、軽度の要介護者への給付制限は「当初の介護保険のコンセプトから逸脱している」といって反対の意思を表明しています。

「自助努力」を強調する経済界

 日本経団連の意見書(四月二十日)に、この厚労省の意見につながる中身が出ています。どんなことをいっているかというと、「人は立たなければ立てなくなる、歩かなければ歩けなくなる」のだから軽度の要介護者には「自助努力による生活の質の向上をめざすことが求められる」、介護予防にあたっては「要支援者及び軽度の要介護者に対する介護給付をスクラップ・アンド・ビルド(改廃)する」とあります。予防をすすめるということではなく、中心は「自己責任」で、「自助努力」でまかなえない部分を支える制度が「介護保険」だということです。

 憲法二五条で保障されている生存権、そのなかに介護を受ける権利もあると思いますが、それを国が責任を持って保障していくという考え方を捨てて、「立てなくなるから自分で立て」「歩けなくなるから自分で歩け」と介護サービスを取り上げ、結局、この間、一番利用が広がっているのは軽度の人たちだから、そこを抑制しようという財政上のねらいが一番大きいと思います。

(つづく)



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp