日本共産党

2004年8月20日(金)「しんぶん赤旗」

解説

イラク国民大会議閉幕

「占領下」の矛盾浮き彫り


 イラク国民大会議は、来年一月末が期限の直接選挙実施にむけた重要なステップでした。しかし浮き彫りになったのは、実質的な米占領体制が、いかにイラクの新しい国づくりに矛盾と困難をもたらしているかということでした。

 大会議を混乱させた最大の要因は、今月五日以来つづく米軍によるナジャフを中心にした大規模な軍事作戦でした。ナジャフを拠点とするイスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師と民兵組織の壊滅を目的にした作戦は各地で一般市民を巻き添えにしています。

 国民大会議では、このナジャフ攻撃に抗議する声がわきあがり、一時は百人以上の代表(代表総数約千三百人)が退席する事態になりました。大会議は停戦にむけ代表団を派遣したものの、米軍の激しい攻撃のため、結局、サドル師と面会が果たせませんでした。

 さらに会議は、暫定政府の監督機関である諮問評議会の選出でも多数の代表が退席し混乱を繰り返しました。退席者の抗議は、大会事務局が用意した評議会委員の候補者リストが、暫定政府を構成する主要政党により一方的に作成された点に集中しました。暫定政府は旧米占領当局の強い影響のもとで樹立されており、実質的な占領体制下での会議開催の矛盾が鮮明になりました。

 国民大会議は七月中旬に開催予定でしたが、サドル師グループをはじめ、スンニ派のイスラム聖職者協会など有力な宗教・政治組織が「占領下の開催には反対」と相次ぎ不参加を表明。会議代表選出過程での一部主要政党による「不正」への反発も加わり、延期が繰り返されてきました。

 今回、諮問評議会が選出されたとはいえ表面化した亀裂は修復されないままです。米軍主導の多国籍軍は今後も長期に駐留をつづける方針で、ナジャフ攻撃のような軍事作戦が継続される可能性は大きく残されたままです。実質的な占領状態がもたらす国民と多国籍軍、そしてこれと協力する暫定政府との間の亀裂は、今後も深まることはあっても解消に向かうことはなさそうです。

 (カイロで小泉大介)



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