2004年8月21日(土)「しんぶん赤旗」
施設の見直しとして政府はホテルコスト(家賃・水光熱費)や食費を新たに徴収しようとしています。これが深刻な問題です。特別養護老人ホームでは、いま月五万円台の利用料が十万円を超えてしまいます。
朝日新聞の全国調査(七月三十一日付)によると、自治体の首長の48%が反対しています。アンケートへの自由記述では「年金額が少ない人は特養に入れなくなる」などと低所得者への影響を心配する声が多いとあります。当然だと思います。現在は、個室に入居できる新型特別養護老人ホームでホテルコストをとることが認められていますが、これをすべての施設に広げていこうということです。
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ホテルコストをとる理由は、在宅と施設の利用者負担が「不公平・不均衡」ということです。負担を「均衡」させるためという見直しです。
負担の均衡のはかり方というのは二つあります。高い方に合わせて均衡させる方法と、低い方に合わせる方法です。負担の不均衡が問題であるならば、暮らしを守る社会保障であれば負担の低い方にそろえるべきです。在宅の利用料が高すぎることが問題なのであって、これを下げればいい。逆に高い方に合わせるということ自体が根本的に間違っているのではないでしょうか。
厚生労働省が事務局を担当している社会保障審議会介護保険部会の報告書(七月三十日)は、施設の入所者の自己負担が年金から支払われていることまで問題にして、ホテルコストを負担させることを「給付調整」といっています。
内閣府にある規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)の中間まとめ(八月三日)は、ホテルコストを導入すれば在宅のケアサービスと同等の自己負担になり、これで施設と在宅のサービスの「一元化」が実現すると期待しています。特養ホームの利用料は実質月額四万円で「三食二十四時間付き一泊千円強という低価格となっており、利用者の負担が極端に少ない」と決めつけています。
特養ホームの利用者負担については、それ以外にも深刻な問題があります。介護保険制度が始まったときに、旧措置制度(福祉制度)ですでに入所していた人たちには利用料の減額制度がありました。保険前の措置時代の利用料負担を超えない範囲にするという五年間の経過措置でした。今回の五年後の見直しということで、これをやめてしまおうとしています。
この利用料負担の減免を受けている人は二〇〇二年度末で九万五千人。特養ホーム入居者約三十三万人の30%近くはこの軽減措置を受けていることになります。毎年三万人くらい減少してきてはいますが、この減免制度を受けている低所得者がどうなるのか。
経過措置がなくなると利用料を免除されている人をはじめとして、負担額は激増します。五年間たったからと機械的に打ち切り、「終の住処」(ついのすみか)からお年寄りを無理やり追いたてるようなことは許されません。
(つづく)