2004年8月21日(土)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】イラク中南部のイスラム教シーア派聖地ナジャフで同派指導者ムクタダ・サドル師支持民兵掃討作戦を強化する米軍は、十九日夜から二十日未明にかけ、今月五日の作戦開始以降、最大規模の攻撃をおこないました。イラク保健省は二十日、過去二十四時間で少なくともイラク人七十七人が死亡、七十人が負傷したと発表しました。
現地からの報道によると、米軍はナジャフで最も神聖とされるアリ廟(びょう)まで二百メートルの地点に戦車部隊を展開させるとともに、AC130攻撃機や武装ヘリを動員し、廟周辺や隣接する共同墓地を空爆。少なくとも三十回以上の大きな爆発音が響きました。
大規模攻撃に先立つ十九日午後には、ナジャフ攻撃で米軍と連携するイラク暫定政府のアラウィ首相らが、サドル師側に武装解除とアリ廟撤退を求める「最後通告」をおこないました。
これにたいし、米軍の攻撃中止とナジャフ撤退を停戦の条件としてきたサドル師は同日、「殉教か勝利しかない」と武装解除を拒否し徹底抗戦の構えを示しました。一方、サドル師報道官は二十日、アリ廟の管理権をシーア派最高権威のシスタニ師らに託す用意を表明。平和解決に向け歩み寄りの姿勢も見せています。
アラブ連盟のムーサ事務局長は十九日、軍事作戦の即時停止を要求。隣国シリアとイランは周辺国に対し、ナジャフ危機解決のため緊急会合を開催するよう訴えました。
中部ファルージャでは米軍が十九日夜から二十日午前にかけ、二度にわたり空爆。現地医療関係者によれば、最初の空爆で民家五棟が破壊され、イラク人五人が死亡、六人が負傷しました。
バグダッド北東部のサドルシティーでは十九日、サドル師支持民兵にたいし、米軍が陸と空から大規模攻撃を加え、民兵側によれば、この戦闘で民兵五人、民間人五人が死亡しました。
また十九日には、バグダッドの米大使館に迫撃砲弾一発が撃ちこまれ屋根を直撃、米国人職員二人が軽傷を負いました。攻撃の際、米国のネグロポンテ駐イラク大使は国外に出ていたといいます。同日にはバグダッド中心部のイラク暫定政府庁舎にも迫撃弾が撃ちこまれ、二人が負傷しました。
南部バスラでは十九日、南部石油会社の本社事務所や倉庫がサドル師支持民兵に放火され炎上しました。サドル師側近は先に、米軍のナジャフ大規模攻撃がつづけば、南部の石油施設を襲撃すると警告していました。