2004年8月22日(日)「しんぶん赤旗」
介護サービスの提供ではケアマネジャー(介護支援専門員)の役割が重要です。社会保障審議会介護保険部会の報告書で盛り込まれているのは、研修の強化と、不正行為への罰則を強化するということです。研修を強めるのはいいことです。しかし「罰則強化」でケアマネジャーの資質を向上するというのは筋が違うのではないか。
仕事の現状は、サービスの提供時間、種類、訪問日程を書いたケアプラン(介護計画)の内容も、訪問介護(ホームヘルプ)の一種類だけなど、いわゆる単品プランが多くなっているから問題なんだといわれています。
なぜこうなっているのでしょうか。東京都が昨年おこなった調査では現行の介護報酬(サービスの公定価格)で採算をとるためにはケアマネジャー一人あたり月六十三・五件のケアプランを担当しなければなりません。これではケアマネジャーが利用者の声をよく聞いて、ケアプランをねりあげ、その後のフォローをきめこまかく行うことは不可能です。じっくり取り組むことを経済的に保障するような介護報酬にしなければ、いいケアプランはできないと思います。
もう一つは、ケアマネジャーという仕事を民間におしつけて、個々人の努力にゆだねていることです。公的な保険の給付管理など制度のカナメを担う立場ですから、人材の育成とか、雇用も含め、自治体とか国がもっと責任を持つ仕組みにすべきです。
介護保険部会の報告書は、一人が受け持つケアプランの標準件数を現在の五十件から引き下げる見直しをもりこみました。ケアマネジャーの意見を聞くと、数の問題だけでなく、いろんな困難事例をかかえるとか、行政との交渉などの業務がすごく大変だという声も多い。ここにもメスを入れ、ケアマネジャーが利用者をしっかり援助できる環境をつくることに力を注ぐべきです。
ホームヘルパーの労働条件の改善も見直しのポイントになります。
介護保険部会の報告書でも「在宅サービスの主たる担い手であるホームヘルパーの実働者数の八割は非常勤であり、登録型ヘルパーが多い。登録型ヘルパーの大半はいわゆる『直行直帰』型であるため、情報共有や技術蓄積が困難でチームとしてのケアが成り立ちにくい」との指摘を紹介しています。介護保険が始まったときから大問題になっていたことが、まったく改善していないということです。
その原因の一つが介護報酬の問題です。利用者の家を訪問するための移動時間とか、会議をする時間や記録する時間、研修をうける時間など、いろんな介護にかかわる業務が報酬上では認められていない。これが労働条件を悪くしている根底にあります。
ホームヘルパーは介護保険の支え手として最大の集団であり、この人たちの労働条件を改善し、やりがいをもって働くことができるかどうかは、介護保険の命運をにぎっています。ところが中央社保協の調査によれば、ヘルパーの七割が月収十万円以下。83%が非正規職員で、「仕事を辞めたくなったことがある」と答えた人は56%にのぼります。
雇用拡大の点でも政府自らがもっとも期待している分野でもあり、劣悪な労働条件の改善に真っ先に取り組むべきです。(つづく)
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