日本共産党

2004年8月23日(月)「しんぶん赤旗」

東京都教委の「つくる会」教科書採択許さない

反対運動を広げてきた思い


 東京都教育委員会は、二十六日にも「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」の中学・歴史教科書を、新設する都立中高一貫校「白鴎高校」教科書に採択しようとしています。「採択反対」の署名や宣伝活動を勢力的に広げてきた「都立中高一貫校での『つくる会』教科書採択を阻止する東京ネットワーク」代表の吉田好一さんと在日本大韓民国青年会中央本部会長のチョウ壽隆(チョウ・スユン)さんに、思いを聞きました。


平和願うから認められぬ

都立中高一貫校での「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク代表 吉田好一さん

 東京都教育委員会が採択しようとしている「つくる会」の歴史教科書は、過去の日本のアジア侵略・加害を隠ぺいし、「アジア解放のためにたたかった」かのように賛美しています。また、「神話」を持ち出すなどして、天皇崇拝を教える内容で、まともな歴史認識の教科書ではありません。戦争を二度と繰り返さないと誓った平和憲法を持ち、平和を願う国民の立場からすると、とても認められない内容です。

 二〇〇一年の教科書採択では、関係者にさまざまな圧力がかかるなか、たくさんの人たちが批判の声を上げ、立ち上がった結果、全国の公立の中学校では一校も、この教科書を採用しませんでした。

 しかし、東京都は二〇〇五年開校予定の中高一貫の白鴎高校での採択を狙っています。

 都庁で反対の署名を提出した二十日には、韓国のテレビ局が取材し、中国の新聞も大々的にこの問題を取り上げていることが紹介されました。アジア諸国が日本に向けている関心の高さを示しました。この教科書を採択するようなことになれば、国際的に見ても、日本が過去の過ちをきちんと清算・謝罪していないことをあらためて浮き彫りにし、アジアの人々との友好・親善を妨げるものであることを証明しています。

 六月から始めた、採決をしないよう求める署名運動で、これまでに三万人近い人たちの署名が寄せられるなど、日本国内での取り組みと関心は高まってきています。運動を進めるなかで、在日本大韓民国青年会が非常に大きな力を発揮したのをうれしく思っています。白鴎高校の卒業生も積極的に採択反対の運動を行っているのも印象的で、短期間で百七十二人の反対する賛同者を集めたのは、すごいことだと思います。

 まだこの問題を知らない人たちが多いことは事実で、ビラの配布や署名活動をすることによって、もっと多くの人たちに広く伝えようと思います。


急速に進む日本の右傾化

在日本大韓民国青年会中央本部会長 チョウ壽隆さん

 「つくる会」は、白鴎高校での採択を、来年の一斉採択の前哨戦としてのぞんでいます。その方向は皇国史観、戦前の教育の復権であり、アジアの国々への侵略はアジア解放のためだったという歴史のわい曲です。こうした「つくる会」の教科書採択に、政権党の幹事長や、文部科学大臣など権力の中枢がバックアップしていることを私たちは危ぐしています。

 各地で心配している会員から、短期間に多くの署名が集まりました。

 教科書問題は、急速に進む日本社会の右傾化の断片です。昨年の自民党政調会長の麻生太郎氏による、「創氏改名は朝鮮の人たちが望んで始まった」発言、石原慎太郎都知事による、「(韓国併合は)彼らの総意で日本を選んだ」発言。これらの発言にみられるように、日本社会がどういう方向に向かっていくのか、不安を覚えます。

 私は在日二世です。祖父母が日本に渡ってきたのは父が三歳のとき。韓国の南部で農業を営んでいましたが、日本の植民地支配のもと、土地の名義がかえられ、生きる糧を失い、やむにやまれず労働力募集に応じてきたのです。戦争が終わって解放後も、お金もなく朝鮮戦争の動乱のなかで、韓国に帰ることはできませんでした。

 子どものころ、近所には強制連行され、日本の炭鉱で働いていた老人もいました。いまでこそ、この事実に耳を傾ける人がいますが、当時は虐げられ、周りに語る言葉もありませんでした。生まれたところから離れ、言葉も通じない国で暮らすという選択は最初からあるはずもないのです。

 今も「創氏改名」に端を発した「通称名」を名乗らざるをえない人もいます。侵略戦争の直接の被害とともに、その後に及んでも、私たちのような苦しみを生んでしまう。その教訓を学ばなければならないと思います。

 韓国と日本との関係は政治というより、大衆が交流し仲良くすることでうめてきました。私が子どものころは、軽べつの対象であり、興味を示す人はあまりいませんでした。しかし、二〇〇二年のワールドカップや韓国ドラマや映画人気などによって、文化や人と人の交流が広がっています。

 政治的なおかしな動きによって交流の芽をつんではならないと思います。これからの時代を見渡したとき、日本と韓国、中国、アジアとの深い関係を結ばなければならないのです。その上で、歴史の事実というものを互いに知っておかなければならないのではないでしょうか。

 来年の採択にむけても、地域、地域でつながり行動していくことが大事です。大手メディアがほとんど報道しないなかで、「教科書問題って何?」という人のために青年会の機関誌でもいろんな情報を提供しています。

 創氏改名 日本による朝鮮半島の植民地支配の下、朝鮮総督府の命令によって、一九四〇年に始まった制度。朝鮮人の姓名を日本の家族制度である「氏」に変え(創氏)、さらに名前の日本化を図りました。教育現場での差別や進学・就職差別を通じて徹底するなど、民族の尊厳を奪うものでした。



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