日本共産党

2004年8月24日(火)「しんぶん赤旗」

政府が狙う医療「改革」<中>

再編・統合

保険を都道府県単位に医療費の抑制をねらう


 政府の「基本方針」に盛り込まれた医療改革のもう一つの柱は、国保、政管健保、組合健保の運営を、それぞれ都道府県単位を軸に再編・統合することです。“医療保険の財政基盤を安定させるため”だとしています。しかし実際は、地方に医療保険への責任を肩代わりさせるとともに、加入者の保険料引き上げにつながる中身となっています。

 医療保険には、自営業者や無職の人などが加入する国保(国民健康保険)と、雇用されているサラリーマンや公務員が加入する健康保険や共済組合があり、それぞれ別の組織が運営しています。

 「基本方針」では、いま市町村が運営している国保を「都道府県単位を軸」に統合することをめざしています。国保を運営する保険者の規模を大きくすることで、財政基盤を安定させるという理由です。

国保料上がる

 失業した人が健康保険から市町村国保にうつるなど、国保加入者が増えています。高すぎる国保料を払えない人が年々増加し、滞納世帯は国保加入世帯の二割近く、約四百五十五万世帯(〇三年)に達しています。

 このため、もともと財政が不安定な市町村国保を集めて統合しただけでは安定しないという指摘があります。開業医でつくる全国保険医団体連合会は「黒字の市町村国保が赤字国保の穴埋めをするという構図で、低い国保料で努力している市町村国保は保険料の引き上げに向かわざるを得ない」と警告しています。

 しかも「財政調整交付金の配分方法を見直す」として、国の負担をさらに削減することもねらっています。財政調整交付金は、国保財政の収入額が不足する市町村に国が支払うものです。この配分方法の見直しをテコに、都道府県や市町村に医療費の抑制や保険料を引き上げさせ、国の負担を減らしたい考えです。

 これに対して全国知事会は、都道府県単位で国保を統合することに反対を表明。「現行制度の枠内で保険者を組み替えても、国保が抱える構造的な問題の解決にはならない」とのべています。

大企業は枠外

表

 中小企業の労働者などが加入する政管健保(政府管掌健康保険)は、社会保険庁が全国一括して運営しているものを、都道府県単位に分けようとしています。国が運営にどうかかわっていくのかは、現在、社会保険庁のあり方自体が検討されているため、まだ固まっていません。

 政管健保の保険料率は現在、収入の8・2%(これを労使で折半)で、全国どこでも同じです。これを、都道府県ごとに別々の保険料率を設定するしくみとします。各都道府県の医療費の差を保険料率に反映させ、医療費が多くかかった都道府県の保険料率は高くなります。

 こういうしくみにすると都道府県別の保険料率がどうなるのか、厚労省が試算したものがあります(別表)。二〇〇一年度の医療費をもとにしたものです。それによると、一番低い長野県の保険料率が収入の7・5%(労使折半)なのに対し、一番高い北海道では8・7%(同)で、現行よりも高くなります。

 地域の医療費水準に応じて保険料を設定するしくみにして、医療費が多くかかったところは保険料を引き上げる、それがいやなら医療費を抑えろという選択を押しつけるものです。

 企業がつくる組合健保は二つにわけられます。「小規模・財政窮迫組合」は、新しい受け皿として、都道府県単位の組合を設立します。一方、財政が安定している大企業の全国的な組合健保などは、これまでどおりの自主運営に。公務員などの共済組合も、自主的な運営を続ける方針です。

 結局、財政が困難な市町村国保や政管健保、小規模な組合健保を都道府県ごとにまとめる一方、大企業の組合健保などは枠外に置くのです。

 医療保険の財政悪化のおもな原因は、国庫負担の削減と、リストラや賃下げによる保険料収入の減少にあります。政府の失政と大企業の横暴な雇用の結果です。ところが「基本方針」はこの土台を改革するどころか、ますます国庫負担を減らすことをねらうものです。

 (つづく)



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