日本共産党

2004年8月25日(水)「しんぶん赤旗」

軍事に民生技術活用要求 日本経団連

「国力に応じた国際貢献」主張

武器輸出禁止の見直し求める


 「(自衛隊の活動が)経済大国として国力に応じた国際貢献が求められている」――。日本経団連は七月二十日に発表した「今後の防衛力整備のあり方について 防衛生産・技術基盤の強化に向けて」でこう強調しました。

 自衛隊が「国力に応じた国際貢献」できるように、軍事予算を「十分確保」することや「重点的に整備すべき装備・技術」の明確化、中長期的な研究・開発・調達の内容の提示など、軍需産業の保護・育成へ要望をつきつけています。

「一つの使命だ」

 技術について提言は、民生技術を「垣根を越えて」積極的に軍事に活用することが日本の「使命」だと述べています。

 「従来、防衛技術と民生技術は、政策上、別個のものとして扱われがちであったが、今後は、防衛、民生を含めた広範囲の総合的な科学技術の向上とフレキシブル(柔軟)な対応能力」が「最重要課題」であるとの認識を強調しています。

 「IT(情報技術)を中心として、高度化する民生技術が防衛技術として活用される事例が増えており、わが国が優位性を持つ民生技術を国民の安心・安全に積極的に利活用していくことが重要」と指摘。さらに、「高度な技術・経済力を持つわが国にとって、国際的に果たすべき安全保障上の一つの使命でもあろう」とまで述べています。

もうけ口として

 一方、近年、兵器の開発・生産、運用面で、多国間連携が進んでいるものの日本は、「先進国間の共同開発プロジェクト」から取り残されていると指摘。その理由に、武器輸出三原則などで武器輸出が禁止されていることを指摘しています。

 具体的事例として、開発費が約二兆円と見込まれる米英共同の攻撃戦闘機(JSF)の開発プロジェクトなどをあげ、「海外企業との技術対話も制限され、最先端技術へのアクセス(接近)ができない」と指摘。みすみすもうけ口を逃していると、嘆いているのです。

 武器禁輸の見直しについて提言は、「既に一九九五年から、日米同盟上の関係強化の観点から、輸出管理政策の見直しについて要望をおこなってきた」としつつ、「一律の禁止ではなく、わが国の国益に沿った形で輸出管理、技術交流、投資のあり方を再検討する必要がある」と求めています。

 このように提言が、武器禁輸の見直しは、日米安保体制の「強化」が目的であると明言しているのは重大です。

宇宙軍事利用も

 アメリカのイラク戦争などでも、軍事作戦を展開するため宇宙空間の軍事利用が進んでいます。

 提言は「宇宙空間からの衛星による情報収集・通信・分析・活用が欠かせない」と指摘。「安全保障における、宇宙利用の重要性の増大を鑑(かんが)みれば、わが国でも、早急に宇宙の平和利用を国際的な解釈と整合させる必要がある」として、軍事利用に道を開くよう求めています。

武器輸出三原則見直しに反対する声

 ○計り知れない信頼の利益

 「日本が世界から『平和国家』として信頼されてきたことの利益は、計り知れない。日本外交の顔が見えないと言われるなかで、少なくとも軍備管理や軍縮の分野で発言力を維持できているのは、武器を売ってもうける『普通の国』でないからだ」「武器禁輸がこれからもそうした国益を育んでいくことを軽視しては困る」(「朝日」7月25日付社説)

 ○三原則が平和外交のよりどころ

 「(武器輸出三原則は)現実に平和外交のよりどころになっている。日本の軍事大国化に対する近隣諸国の懸念を払しょくし、軍備管理や軍縮問題で日本が一定の発言力を持てるようになったのは、国際社会に日本の平和国家としての理念が浸透したからだ」「その意味では、日本が国策として3原則を守ってきたことは、大きな意義がある」「それでも、3原則を見直すことが必要なのか。そんなことはない。防衛産業の振興と引き換えに平和国家としての看板を書き換えるという愚を犯してはならない」(「毎日」8月6日付社説)

 ○武器を輸出しないという柱こそ堅持を

 「なぜ今、見直さなければならないのか。武器を輸出しないという大きな柱こそ、日本外交の武器だった。堅持していく必要がある」(河野洋平衆院議長、8月17日、福岡市内で講演。「毎日」8月18日付)



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp