2004年8月26日(木)「しんぶん赤旗」
戦前の天皇制政府と同じように日本のアジア侵略を「大東亜戦争」などと呼ぶ歴史教科書の採択をめざす。卒業式で「日の丸・君が代」強制に従わない生徒がいる学校の教員を処分する――。全国でも突出した反動的教育行政をすすめる東京都教育委員会の背後にはこうした動きを強め、増幅する東京都議会の勢力がいます。その実態をみると…。
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二〇〇二年六月のこと。東京都議会議事堂二階で、「中国・韓国の教科書に見る日本」と題する「歴史教科書を考える展示会」が開かれました。主催したのは「世界の歴史教科書を考える議員連盟」。中心は三人の都議――民主党の土屋敬之(板橋区)、自民党の古賀俊昭(日野市)、田代博嗣(世田谷区)の各氏でした。
展示の文章をみても、日本のアジア侵略を肯定、美化するねらいであることは明白でした。
韓国を日本の領土に併合したことについては「完全に合法的」。従軍慰安婦については「『強制連行』の事実はいっさいない」。人体実験などで悪名高い「七三一部隊」では「毒ガス・細菌兵器の研究や開発は国際法違反ではなかった」…。日本政府でさえ認め、反省を表明した事実さえも否定する侵略戦争美化の宣伝でした。
侵略戦争賛美の歴史観を持つこれら三都議が、都教委の反動的教育行政を督励してきました。
田代都議は、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書採択が問題になった〇二年二月の都議会で「つくる会」教科書採択に反対する運動を「不法・不当な妨害や干渉」などと攻撃。問題の教科書が採択されやすいような制度に変えるよう要求し、横山洋吉教育長は「改善」を約束しました。
また、ことし三月十六日の都議会予算特別委員会では、民主党の土屋都議が、卒業式で「君が代」を歌わない生徒がいれば「教師の責任」という論理を展開。「指導を担当した教師は、処分対象と考えていいか」とせまり、横山教育長は「おっしゃるような措置をとる事になります」と答弁。その後、都教委は実際に教員六十七人を「厳重注意」などにしました。
都議が要求し、都教委が呼応する――。そのパターンは、この六月にも繰り返されました。自民党の代表質問でした。
「君が代」問題で処分された教員にたいする「研修」を取り上げた古賀都議。「反省の態度が見られず、成果が上がっていない場合、研修の延長、再研修を命じるべきだ」とせまると、横山教育長は「成果が不十分の場合は再度研修を命ずる。同様の服務違反を繰り返すことがあった場合には、より厳しい処分を行う」などと答えたのです。
これらは三人の都議だけの問題ではありません。
もともと、都議会自民党は「君が代斉唱を指導しろ」という要求を都議会で繰り返し、代表質問で会派をあげて「君が代」斉唱の「適正実施」や教員の処分などを求めています。古賀都議は、都議会自民党幹事長代行、総務会長を務めました。
また、土屋都議は、都議会第二党の民主党で現在も総務会長を務める執行部の一員です。
土屋都議は、昨年の都知事選で民主党の支持候補がいるのに石原都知事を支援し、都議会民主党副幹事長をいったん解任されました。しかし、その後、総務会長に“復活”。民主党が石原都知事の事実上の与党として都議会で行動するなか、田代、古賀両自民都議とともに石原都知事支持の急先鋒(ぽう)として認められています。
「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会」の近藤徹事務局長は「一連の動きではっきりしているのは、石原都政のもとで都議会の与党勢力が『教育は不当に支配に服することなく』とする教育基本法に反し教育に介入してきていることだ。この攻撃に屈することはできない」と話しています。
六月の都議会定例本会議で、君が代問題などを取り上げ、都の姿勢を批判した日本共産党の大山とも子都議は語ります。
「学校の生徒は、憲法が保障する良心の自由が守られないのかと追及しました。学校で子どもたちが主人公になれるよう創意工夫するのが本来の教育行政です。いまの事態を広い世論に訴えて、危険な動きに歯止めをかけていきたい」