日本共産党

2004年8月27日(金)「しんぶん赤旗」

「つくる会」教科書

都教委の採択許さない

市民が抗議、撤回求める


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「つくる会」教科書採択に反対しビラを配り宣伝する「都立中高一貫校での『つくる会』教科書採択を阻止する東京ネットワーク」の人たち=26日、都庁前

 喜んで戦争に参加させようという教科書を子どもに渡していいのか―。東京都教育委員会が侵略戦争を美化する「つくる会」の歴史教科書(扶桑社)を、来春開設する中高一貫校・白鴎高校の付属中学の教科書に採択した二十六日、反対する市民・団体は早朝から都庁前で宣伝、採択後は抗議の記者会見を開きました。

 「じっとしていられなかった」。午前八時からの宣伝に参加した東京・調布市の西村恵子さんは、都立高校に子どもを通わせる保護者です。「世界の常識とかけ離れたことが子どもに教えられるのは耐えられない」といいます。

 午前十一時すぎ。採択される見通しを報じるニュースに、都庁のロビーに集まった人びとからは、「これが見識ある教育委員会といえるのか」と怒りの声が。

 二十の傍聴席の抽選には百七十人以上が並びました。在日大韓民国青年会神奈川本部の゙壽昭(チョウ・スソ)会長は「審議はほとんどなかった。本当にいい教科書を選びたいなら、実際に教えている教師たちの意見を尊重すべきです。いい日本にするには、歴史の事実を教えることが大切でしょう。全国に波及することのないようこれからも活動したい」と話します。この日、同会から、たくさんの若者たちがかけつけました。

 採択に反対する賛同者が六百人を超えた白鴎高校卒業生らによる「白鴎有志の会」の人たちはおそろいの青いスカーフをまいて参加。東京芸大の神谷嘉美さん(23)は、「あの教科書が店頭に並んだとき、こういう考えもあるのかと感じた。でも、偏った思想の本を教科書として母校に強制するのはやめてほしい。あきらめない」。

 会見を主催した「都立中高一貫校での『つくる会』教科書採択を阻止する東京ネットワーク」の吉田好一代表は、「審議では“あの教科書を戦争賛美という人は読んでない人だ”と発言した委員がいたが、そうではない。『大東亜戦争』といういい方、戦争がアジア独立に役だったというのは、戦争賛美だ。わずか二カ月の間に三万近い反対の署名を集めたことを私たちは重く受けとめているし、都教委も重く受けとめてほしい」と話しました。

 子どもと教科書全国ネット21の代表委員、小森陽一東京大学教授は「都民の声や学校現場の意見を聞くことなく教育委員会の独断で教科書を採択することは、教育基本法(一〇条)や学校教育法にも反する行為だ」と強く批判し、採択決定にいたる過程や審議資料の公開と、採択の撤回・やり直しを求めました。


「つくる会」の歴史教科書とは

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「大東亜戦争」のタイトルが登場する歴史教科書

 太平洋戦争を「大東亜戦争」と命名 真珠湾攻撃から沖縄戦までの項目に、「大東亜戦争(太平洋戦争)」のタイトルをつけています。この呼び名の意義を「日本の戦争目的は、自存自衛とアジアを欧米の支配から解放し、そして『大東亜共栄圏』を建設することであると宣言した」と書いています。執筆者たちが「大東亜戦争」と命名したのは、この呼び名にこめられた「戦争目的」どおりの戦争だと考えているからです。

 南京大虐殺事件を「論争」問題に解消 中国を侵略した際、日本軍が中国の人たちを大量に殺害した南京事件を、「日本軍によって民衆にも多数の死傷者が出た」と書いて認めます。しかし、「この事件の実態については資料の上で疑問点も出され、さまざまな見解があり、今日でも論争が続いている」とつけくわえ、南京事件があったかどうか、結局わからなくしています。

 「侵略」という言葉をいっさい使っていない 日本がおこした日清戦争、日露戦争、太平洋戦争などについて「侵略」という言葉をいっさい使っていません。日本以外の戦争については、ドイツのポーランドへの「侵攻」、ソ連の満州への「侵入」などと、他国を不当に侵すという意味の言葉を使っています。執筆者たちは、日本が中国などにおこなったことを「侵略」とも、東南アジアへの「侵略」とも思っていないからです。



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