日本共産党

2004年9月1日(水)「しんぶん赤旗」

海外派兵型の自衛隊に

来年度軍事費の概算要求

解説


 防衛庁が三十一日に決定した二〇〇五年度の軍事費(防衛関係費)の概算要求は、新「防衛計画の大綱」を先取りし、自衛隊の海外派兵のいっそうの推進のため、組織全体にわたる体制の大転換を狙うものです。

 最大の転換は、陸海空三自衛隊の新たな統合運用態勢への移行です。

 新設が計画されている「統合幕僚監部」(仮称)は、三自衛隊の作戦運用を一元的に行う司令部組織になります。これまでは、特別の部隊を編成しない限り、三自衛隊がそれぞれ部隊を指揮していました。今後は、統合幕僚監部とともに新設される「統合幕僚長」が制服組の最高司令官として、作戦運用を指揮することを計画しています。

 自衛隊の統合運用に関する統合幕僚会議の報告書(〇二年十二月)は、海外派兵の拡大や日米共同作戦の効果的な推進という狙いをあけすけに語っています。国連平和維持活動(PKO)やインド洋での米軍支援をあげ、「(海外での活動では)各自衛隊の能力を事態の特性に応じて柔軟に組み合わせた運用が必要」と指摘。また、「統合運用を基本とする米軍との共同作戦を円滑に行う」ことも理由の一つにあげています。

 統合幕僚会議のもとで、衛星画像の分析や、通信傍受を行ってきた情報本部は、防衛庁長官直轄への格上げも計画しています。

 陸海空の各自衛隊も、海外派兵型への転換を目指しています。

 海上自衛隊は、海外展開する艦隊の通信能力の強化をはかるシステム(「衛星通信ネットワークの再構築」)の予算を獲得するため、創設以来初めて、護衛艦の新規調達をやめました。

 陸上自衛隊は、「国際任務対応能力向上」に向け教育訓練を実施する「国際活動教育隊」の新設準備のため、イラク派兵で使用している軽装甲機動車などの装備品を整備。航空自衛隊は、〇三年度から行っている米軍から空中給油を受けての米空軍演習(米アラスカ州)への戦闘機参加も引き続き実施する計画。海外での対地攻撃能力強化につながる精密誘導爆弾も引き続き調達(七億円)します。

 〇四年度から引き続き導入経費を盛りこんでいる「ミサイル防衛」は、相手国のミサイルを「無力化」することによって、米軍の先制攻撃を可能にするもの。防衛庁は、四隻のイージス護衛艦に海上発射型ミサイル(SM3)を搭載し、地上発射型ミサイル(PAC3)の部隊(高射群)を四個編成する計画。今回の概算要求は二隻目と二個目の高射群を編成する費用にあたります。

 海外派兵型への転換をめざす一方、旧来型の無駄遣いも目立ちます。大部隊による着上陸侵攻対処を想定した90式戦車は、今年度と同数の十五両(百十九億円)を計上。政府みずから「本格的な侵略事態生起の可能性は低下」(〇三年十二月の閣議決定)とし、「戦車及び火砲等の在り方について見直しを行い適切に規模の縮小等を図る」としていながらの調達です。

  田中一郎記者


新「防衛計画の大綱」

 日本の「防衛力」のあり方やその具体的な整備目標などの基本指針を定めたもの。一九七六年に初めて策定し、九五年に改定したものが現行の大綱です。政府は、二〇〇三年十二月の閣議で、年内中の新大綱の策定を決定しました。新大綱では、自衛隊の任務を「日本防衛」から、地球規模での海外派兵に軸足を移すことを狙っています。



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